人と自然の関係性を回帰
市場規模は限定的もコア層が支える
CASESTUDY|注目カテゴリーと先進事例
アウトドア上級者のスタイル。ブッシュクラフトは「自然環境のなかの生活の知恵」の意味。アウトドアとしては北欧が起源とされている。森林が多く林業が盛んで、寒冷地の山間部で暖をとるため焚き火などの技術が発達した。日本も山間部が多く林業が盛んだった経緯があり、本来のブッシュクラフトが伝わっている。シェルターを現地で自作し、食料も現地調達するコアな層もいるが、日本では安全性などから限界があり、おおむねテントや食料は持参する形となっている。人と自然がより近かったころに回帰し、やるほどにディープにはまっていく人が多い。ブッシュクラフトの市場はけっして大きいものではないが、興味をもつ人は徐々にふえている。一定のコア層が存在し、他のアウトドアスタイルと比較してリピーターが多く、突出して利用頻度が高い。
近年は専用サイトを導入したり、山林をブッシュクラフトの野営地として貸し出したりする動きがみられたが、ここにきて撤退する事業者も出てきている。思うほど利用が伸びなかったことが大きい。さらに、熊の出没被害も懸念されている。ただし、コア層を掴んでいる施設ではその影響は限定的で、ニーズは底堅いことがわかる。
高い収益性を期待する事業ではないが、放置されている山林の活用や林業との相乗効果、さらには最近話題になっている木育など、新たな可能性が期待される面がある。
運営するのは君嶋林業の君嶋陽一氏。所有している山から必要な分だけ樹木を伐採しながら間伐、下刈りなどを管理する自伐型林業を行なう。現在はキャンプ場経営が業務の多くを占めるようになっている。
栃木県塩谷町から「LAKESIDEBASE︵塩谷町東古屋キャンプ場︶」の指定管理を受けて運営しているが、コロナ禍以降、ルールを熟知していない人が多く訪れて騒がしくなったため、もっと静かにキャンプできる環境はないかと考えていたところ、野営をメインとするキャンプ上級者から、君嶋氏の山を伐採したスペースがキャンプ場に適しているとの指摘を受け、アドバイスを受けながら現在の形に造成した。キャンプ場はほぼ手が入っていない状態で、自然に囲まれている。上級者向けになるほど山の奥や高い位置になる。
安全面の配慮からサイトでの直火、生木の伐採は禁止している。焚火に使う木の枝などは薪をつくる際に木から落とした枝が集積所に置かれており、自由に使用できる。君嶋林業としてはキャンパーが枝を使用することで山が綺麗になり、キャンパーは枝を無料で自由に使えるメリットがある。
伐採した木はあえて天日干しにし、手間暇をかけて薪にして販売している。天日干しは自然乾燥より火付けがよく、よく燃えると利用者に評判だ。自社のキャンプ場で販売するほか、自家製薪を使って自家焙煎したブレンドコーヒーの販売もしている。
同施設は「不便を楽しむ」をテーマにしており、電源はなく、炊事場や風呂・シャワーもない。簡易トイレで必要最低限の設備のみという利便性を極力削いだ形になっている。常連客やブッシュクラフターには好評で、そのほうが自然のなかでのんびり過ごせる、デジタルデトックスができる、そもそも自然のなかに電気など必要ないという意見が寄せられた。
ただし、君嶋氏は不便さと清潔感は別と考え、簡易トイレは徹底的に清潔にしている。また、騒いでいるグループがいないか昼夜問わず平日1、2回、週末は3、4回程度見回っており、焚火の消火時間である22時の最終見廻りには焚火の火が残っていないか確認する。さらに女性キャンパーには防犯ブザーを渡している。このような利用者サイドに立った対応が同施設の高評価につながっている。利用者の君嶋氏への信頼も厚い。
同施設からはブッシュクラフトはバランスが重要であることが学べる。客層を拡大するために便利にすれば本来のよさが失われる。とはいえ自然のままでは危険が多い。キャンパーが望む適度なバランスをとることが重要だ。
利用者層は・・・<続きは本誌にて>