ヒトカラメディア
【試し読み】
ヒトカラメディアはオフィスやセットアップ・シェアオフィスの企画・デザイン・運営までを一貫して支援する企業である。オフィスのほかホテル、オフィスと住宅・店舗の複合ビルなどの多様な案件を手がけている。
その強みは、リーシング・運営までカバーすることでテナントや消費者のニーズに基づいた企画・デザインを提案できる点にある。デベロッパーとの協業を例にとれば、ビルの基本計画の初期段階からプロジェクトに関与し、コンセプト策定や商品企画、テナント層の設定、さらにフロア構成やスタッキングプラン、リーシング計画を策定。竣工後の管理・運営までを提案。運営ストラクチャーは、PM方式、パススルー型、マスターリースまで柔軟に対応できる。
「PM、セットアップ・シェアオフィスの企画・デザイン、竣工後の管理・運営など個々のパーツを担える会社はたくさんあるが、それらを包括して提案できる企業は非常に少ない。業界で独自のポジショニング」と話すのは代表取締役の髙井淳一郎氏だ。

顧客層は大手デベロッパーや鉄道会社を主体に、リート・ファンドを運営するAM会社など。その依頼内容は概ね3つだ。
1つ目が、取得・保有ビルの収益性向上。「インフレの進行で当初の開発・改修計画の費用や、運営コストが上振れしている。さらなる収益性の向上をめざしたいという要望が増えている」(リアルエステートデザイン事業部 事業部長の竹林孝文氏)。
2つ目が、コンセプト・テーマの付加・設定。ビル単体の収益性だけでなく、運営を通じて地域コミュニティづくりやエリアへの貢献を打ち出し、あわせて企業ブランドの向上も果たしたいというニーズである。とくに鉄道会社からの依頼が増えている。
3つ目が、人手・リソース不足への対応である。企業規模に関わらず人材不足は慢性化している。シェアオフィスなどの新規事業を始めたいが、調査・研究するための社員を十分に確保できない企業は多い。「企画・デザインから運営まで一貫して提案してほしいという相談が増えている。クライアントの多くはグループにPM会社を抱えているが、多くはが設備管理を源流としており、シェアオフィス運営やエリアマネジメントなどコミュニケーションを多く必要とする業務はどちらかと言えば不得手というケースもある」(竹林氏)。
ヒトカラメディアが手がけた事例をいくつか見ていこう。
「WAW赤坂第35興和ビル」(東京都港区)は、2024年竣工のオフィスビルの再生計画。オーナーは日鉄興和不動産で、長く入居していたテナントの退去が決まったことで改修に踏み切ったもの。
物件は将来的な再開発予定も加味し、短期での投資回収を目指していた。ヒトカラメディアでは、既存の間取りを活かした「会議室付き専有個室」の配置やエリアの交流拠点、活性化につながるイベントを盛り込んだシェアオフィス企画を提案。竣工後の運営も担当し、2年を待たずに投資回収・満室稼働を実現している。


WAW赤坂第35興和ビル
東京メトロ南北線「六本木一丁目」駅など5駅に徒歩でアクセス可能。2024年2月開業
「SHIBUYA WayP(渋谷ウェイプ)」(東京都渋谷区)は、2025年竣工の新築オフィスビル。オーナーは東急で、ヒトカラメディアは基本計画段階からプロジェクトに関与。商品企画および設計・デザインの支援、リーシング、運営を一括して手がけた。
近隣の北谷公園と一体で多様な働き方を具現化すべく、2~10階にフレキシブルオフィスや共有ラウンジ、ミーティングスペース、ルーフトップテラス等を配置し、1階にはカフェを誘致。フレキシブルオフィスは席単価10万円以上、坪単価10万円を超える区画もあり、エリアのトップラインを突き抜ける水準を実現した。


SHIBUYA WayP
渋谷駅より徒歩7分。建物は地上10階建てで、4~10階の大きな吹き抜けが特徴的。オフィスは1~19人用と多様な区画を用意
「U biz神田千桜」(東京都千代田区)は、1988年築のオフィスビルの再生計画。神田東松下町というエリア特性から製造や卸関連の老舗企業をターゲットにし、地下1階の執務室を1階のショールームと定義しセット貸しすることで稼働率と収益性を向上した。上階はセットアップオフィスに改修している。結果、早期に満室稼働を果たすとともに、賃料も当初計画を上回る単価で成約している。


U biz神田千桜
都営新宿線「岩本町」駅より徒歩3分。室内は木目を基調としたデザインで統一
これら新規開発やリニューアルに伴う企画・デザイン・運営実績は、オーナー・投資家からも高く評価されており、リピート需要のほか、紹介ベースで持ち込まれる案件が増加している。
今後はハード面だけでなく、ソフト面のサービスに注力する方針。「テナントニーズは流動的で、建物特性、エリアや時節によって大きく変化する。綿密なマーケティングのもと、案件に見合ったコンセプトやブランドを付加し、より競争力の高いプロダクトを目指したい」(髙井氏)。
複合タイプのビルにも着目する。近年オフィスや住宅、ホテルともに稼働率・賃料は上がっているが、オペレーショナルな要素が次第に増えており、単一用途はリスクが大きいとみている。都心型のオフィスとホテルの複合ビルなどを提案することで、キャッシュフローの安定性を高めるとともに、一体運営でコストを廃し、収益性を向上させたい考え。