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ケネディクスに聞く

収益向上への関心かつてなく
事業全体での役割意識を

【試し読み】

インフレや金利上昇、建築費高騰などを背景に、ファンドの「バリューアップ力」が問われる時代になった。
賃料上昇やレントギャップ解消など、収益機会を主体的に取りにいく「攻めの運営」が求められ、その実行にはAMだけでなくPM、BM、運営、設計など多様な企業が、ファンド戦略全体を理解したうえで価値向上に寄与することが不可欠である。
今、不動産運用には、対等な立場で共に戦略を描く“理想的なパートナー”の存在が強く求められている。

賃料増加、コスト高、金利上昇……
バリューアッドの意識がより必要に

 当社は1995年の創業以来、不動産価値の最大化に注力する運用を数多く手がけてきたが、各案件における投資家のバリューアッド志向が、昨今これまでになく高まっていると感じる。
 要因は3つある。2022年以降に顕在化したインフレ傾向と、それに追随してはじまった賃料上昇基調。建築費の急上昇と、それによる既存物件の相対的価値向上。そして、金利上昇だ。従来ありがちだった「稼働優先・賃料横ばい」のスタンスだと、見かけの高稼働の裏で利払い後の実質リターンが目減りしていくため、賃料を上げる「攻め」の運営姿勢が必要になってくる。

パートナー企業とは対等な関係
ストラクチャー全体への目配せを

 インフレや利上げにキャッチアップする観点では、コストの抑制に終始するのではなく、より大きな収益の伸びを狙う姿勢が大切だ。そのためには、テナントごとのニーズやトレンドを俯瞰したうえで、どのような戦略が有効かを察知しなければならない。
 そのためには当社のようなAM会社だけでなく、PM会社、BM会社、LM会社、運営会社、設計・デザイン会社などのパートナー企業が対等な関係で知恵を出し合う必要があるだろう。物件の価値向上を通じて、プロジェクトに関係する各社がWin-Winの関係になるのが理想だ。
 このことをふまえ、協業する相手に求められることは、ファンドストラクチャー全体にわたる視野と、そのなかでの自社の役割についての理解である。設計・デザインを例に挙げれば、意匠や素材の質、独創性のみ追求するのではなく、ファンドの運用戦略のなかでどう自社の強みを発揮するかを考えてもらいたい。

多様な案件で価値向上に挑む

 当社がパートナー企業と協業しながら取り組んでいるバリューアッド事例をいくつか紹介する。
 「IsaI AkasakA(イサイ アカサカ)」(東京都港区)は、ホテル兼サービスアパートメントだった既存建物を取得してリノベーション、2023年に開業したシェアオフィスである。既存のホテルライクな内装や充実した共用部を活かし、オフィスとしての差別化と価値創出を図った。約220室と区画数が多い物件ながら、稼働率は2025年10月現在で8割に達している。本件では、シェアオフィス事業者のRJオフィスが企画から関与し、マスターリース(ML)のうえ運営を担っている。

IsaI AkasakA

【before】
IsaI AkasakAの旧オフィス(元客室)

【after】
IsaI AkasakAのオフィス

客室だったスペースを個室のオフィスに改装

【before】
IsaI AkasakAの旧ラウンジ(元会議室)

【after】
IsaI AkasakA

会議室だったスペースをラウンジに改装

 「あきるのプレイス」(東京都あきる野市)は、東急ストアが出店していた複合店舗を同社の退去を受けて取得し、外装工事や1階のリテナントのうえ2025年1月にリニューアルオープンした商業施設である。後継テナントとして、いなげやの高価格帯食品スーパーを誘致した。本件は商業PM会社であるプライムプレイスとの協業プロジェクト。当社と双方で企画・立案したプランに沿って、今後は上層階のリニューアルも進める予定である。2026年度中に稼働率100%、リニューアル前比較でNOI+15%水準の達成を目指す。

あきるのプレイス

あきるのプレイス

ブルーミングブルーミー

建築面積9,248.40㎡、JR五日市線「秋川」駅より徒歩約4分(左)。いなげやの高価格帯食品スーパー「ブルーミングブルーミー」(右)

 そのほかのバリューアッド案件として、2025年6月に新規発行した賃貸住宅(全13物件・645戸)を投資対象とする不動産セキュリティ・トークン(ST)がある。同商品は「バリューアッド戦略」を特徴として掲げており、入居者の入替・更新時におけるレントギャップ解消や、室内バリューアップ工事による賃料上昇によって、ポートフォリオ全体のインカムゲイン向上を狙う。現在は各物件のPM会社と協業して、収益向上に向けた地道な活動を進めている。


小松浩樹氏

【話し手】
小松浩樹氏
取締役CIO 戦略投資本部長 兼 エクイティ運用部長

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