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――サンフロンティア不動産×いい生活

テナント満足をPMの強みに
伴走型のアプリ開発が下支え

【試し読み】

サンフロンティア不動産は、PM業務を受託するオフィスビルにてテナント満足度の向上を図る「カスタマーサクセスプロジェクト」を推進している。テナントとの意思疎通を円滑にし、日常の悩みや潜在的なニーズを汲み取り、迅速に対応することを目的とした取り組みである。このプロジェクト実行のためのツールとして、不動産テック企業・いい生活がオフィスビル市場向けに新しく開発したアプリを活用している。
本稿では、サンフロンティア不動産にプロジェクト立ち上げの背景やアプリ導入の決め手、今後目指すPM像を、いい生活にはアプリ開発のプロセスと特徴をそれぞれ聞いた。

テナント満足度向上に舵を切る
コミュニケーション円滑化アプリを活用

――「カスタマーサクセスプロジェクト(CSP)」立ち上げの背景を教えてください。
種田 CSPは一言で言えば、「テナント企業様に寄り添ったサービスを提供するプロジェクト」です。テナント企業様の満足度を高め、「サンフロンティア不動産のファン」を増やし、長期入居や移転時にも当社管理物件が選ばれることを目指します。これにより、賃料収益の安定化やオーナー満足度の向上にもつながると考えています。あわせて、当社グループが運営する貸会議室やホテルの認知度向上や利用拡大などの波及効果にも期待しています。
 CSPを立ち上げたのは2年前です。管理棟数が500棟、取引テナント数が4,000社を超えたことを機に、改めてPM業務の役割を見つめ直し、新たなビジネスチャンスを創出することを目的に発足しました。

――CSPを推進するうえでの課題を教えてください。
種田 テナント企業様の満足度を高めるには、テナント企業様とPM会社のコミュニケーションの「量」と「質」の向上が欠かせません。しかし、従来の連絡手段は電話とメールに限られ、対応が属人化してチーム内で情報共有が十分に行われないという課題がありました。
 いい生活様とはこれまで、リーシング業務における契約書管理のためのPM向けシステムで既に取引があり、信頼関係を築いていました。CSP発足を機にアプリの刷新を検討する中で、これまでの課題を相談したところ、解決に適したツールの提案をいただき、同社の力を借りることにしました。
 
三森 当社は、賃貸住宅の分野で入居者とのコミュニケーションを円滑にするアプリを開発してきた実績があります。そのノウハウをベースに業務のヒアリングとプロセスの標準化を行うことで、オフィス特有のニーズを満たす開発や運用のご提案を進める事ができました。また、当社には「カスタマーサクセス本部」という部署があり、CSPを立ち上げたサンフロンティア不動産様と同様に、「顧客の成功」を重視しています。こうした共通の価値観が、質の高いツール開発を実現する大きな原動力になったと考えています。加えてシステム開発を外部に委託しているSaaS企業も多い中、当社は全従業員223名のうち81名が開発エンジニアという体制(2025年3月末時点)であり、サービスの進化を自らの手で創り出している点も評価頂いたと考えています。

テナントニーズへの素早い対応から
能動的なサービス提案につなげる

――アプリでできることと、現在の導入状況を教えてください。
三森 テナント側は、各種申請書の取得、チャットによる問い合わせ、定期点検の予定確認などが可能です。一方、PM側(サンフロンティア不動産)は、テナントとのやり取りのデータ収集、アンケートの実施、経営セミナーやサンフロンティアグループが運営する貸会議室、ホテル、ビルメンテナンスサービスなどの情報発信を行えます。また、オリジナルアプリとしてリリースすることで、ブランディングの強化にも繋がります。 導入状況としては、プレ運用を経て2025年10月に本格運用を開始した段階です。開発にあたっては、現場ニーズの洗い出しに加え、プレ運用期間中に定例会を通じて課題を共有し、継続的に機能改善を図りました。

種田 アプリの導入は、テナントの総務担当者様を中心にチラシ配布やQRコードを活用して促進しています。
 導入初期段階ながら、 テナント企業様からは、設備や清掃に関する問い合わせが多く寄せられています。これらは対応のスピードが満足度を大きく左右する重要な要素です。アプリを通じて問い合わせ対応の流れを把握できるようになったことで、今後、対応所要時間の集計や分析を通じて、傾向をつかみ、より的確な対策を講じることができるという手応えを得ました。
 さらに今後は、 経営セミナーや、PCひとつで即入居・業務開始ができるセットアップオフィスの空室期間を活用して1時間単位でセットアップオフィスを貸し出すサービスなどの情報の配信にも注力していく予定です。アプリを通じて得られるテナント企業様の反応を分析することで、潜在的なニーズを把握し、より満足度の高いサービス提供につなげたいと考えています。実際に、BCP対策の一環として防災マニュアルを配信した際には非常に高い閲覧率を記録し、テナント企業様から「他店舗にも共有したい」との声をいただきました。

アプリのダウンロード画面

アプリのダウンロード画面。サンフロンティア不動産のオリジナルアプリとしてリリース

 こうした反応から、配信する内容によってテナント企業様の関心が大きく変化することがわかり、今後の情報発信の方向性を検討する上での重要な示唆となりました。

テナントの事業活動を応援するパートナーに

――アプリ活用やCSPに関する今後の展開を教えてください。
種田 今後は、管理物件の全テナント企業様へのアプリ導入を目指します。当社は管理棟数600棟の達成を目標に掲げており、将来的にはアプリを管理物件の“標準装備”と位置付ける考えです。先ほど触れた設備や清掃に関する問い合わせは、PM会社が間に入りBM会社へ取り次ぐケースが一般的ですが、今後はBM会社もアプリ上で問い合わせ内容を閲覧し、テナント企業様と直接日程調整できるような仕組みを構築することを考えています。これにより、情報共有のスピード向上とPM業務の負荷軽減が期待できます。
 いまだ、テナント企業様側にとって当社は「管理会社」という認識が主流のようですが、そこから脱皮して、今後はテナント企業様の事業活動を応援するパートナーとなれるよう、アプリを軸にCSPを推進していきます。それがPM会社としての差別化にもつながるはずです。
 
三森 今回のプロジェクトは、サンフロンティア不動産様の課題解決であると同時に、当社にとってはオフィス系PM会社向けの新商品開発という側面もあります。同社向けに開発したアプリをベースに、「いい生活Tenant」として広く市場展開を進めていく予定です。PM会社にとってこのアプリは、業務負荷の軽減とサービス品質の向上の両方を実現してくれるものだと考えています。蓄積したデータの活用やAI活用などテクノロジーの力で、今後も不動産市場を支えていきたいです。
 
――ありがとうございました。


「カスタマーサクセスプロジェクト」の推進メンバー

「カスタマーサクセスプロジェクト」の推進メンバー

種田 俊介氏(左中)
サンフロンティア不動産 プロパティマネジメント事業部
第二部 副部長 兼 カスタマーサクセス室
 
塚本 佳弘氏(右中)
いい生活 執行役員 ビジネス・ストラテジーグループ 営業戦略本部 本部長
セールス&マーケティンググループ 東日本営業本部 営業2部 部長
 
三森 工己氏(左)
いい生活 セールス&マーケティンググループ
東日本営業本部 営業2部 チームリーダー
 
和木 英晃氏(右)
いい生活 ビジネス・ストラテジーグループ
事業企画本部 チームリーダー

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