──クレアーレ/西多摩直葬センター[東京都羽村市]
[特集]集客イベント考|イベント事例【遺影撮影会】
月刊フューネラルビジネス8月号の「イベント事例」では、「『集客イベント』に関するアンケート」に回答いただいた企業のなかから、“注目すべきイベント”を編集部がピックアップ。イベントの概要、企画意図、販促・運営方法、効果・成果、課題・展望の5つの視点から各社に話を伺った。ここでは、クレアーレが実施した、4社共同の遺影撮影会を紹介する。
【イベント名】「愉しく美しい遺影を撮りましょう!」
【目的】顧客接点の拡大
【ターゲット】高齢女性
東京都羽村市の専門葬儀社㈱クレアーレ(社長藤塚貴志氏)が実施した、高齢女性を対象とした遺影撮影イベント。地元羽村市の商工会が主催する、「まちゼミ」(地元企業が自社の専門性を活かして開講する住民向けイベント)の一環として行なったもの。商工会に所属する飲食店、化粧品販売店、動画・写真撮影会社とクレアーレの4 社合同企画で、全44 講座のなかの1 講座として参画した。
会場はタッグを組んだ飲食店で、完全予約制・参加費無料。1 日に計4 枠を設け、1枠当たりの定員は3人、所要時間は1時間30分程度である。講座(イベント)内容は、昼食の提供、メイクアップ、写真撮影、葬儀相談の4社4工程で構成され、参加者揃っての昼食後、プロメイク、写真撮影の流れ。その工程のなかで発生する待ち時間に、クレアーレが参加者の葬儀に関する相談に対応する。撮影した遺影写真データは修正後USBに収め、参加者宅に訪問し手渡すというイベント設計となっている。
イベントは地元住民との新たな接点づくりを目的に企画された。クレアーレでは以前から、顧客接点の拡大や知名度向上の手段としてまちゼミへの参加に関心を寄せていた。まちゼミは、商工会と市が連携してパンフレットを全戸(約2 万5,000 世帯)に配布するため、地域への広報効果が高く、参加費も掲載枠1 つ当たり3,000 円と費用対効果に優れる点が魅了だった。しかし、葬儀社単独で参加するのは企画運営や集客面に不安があった。
一方で、協業企業もそれぞれ課題を抱えていた。撮影会社は法人向けの業務を中心に展開しており、個人向けイベントの企画・運営は未経験。化粧品販売店は単独イベントでは参加者に「営業されるのでは」という先入観をもたれやすいことが懸案だった。さらに、飲食店は普段、市役所内で営業しているため、日曜日など休日の来店数が伸び悩むという慢性的な課題を抱えており、稼動率を上げる方法を模索していた。
そうしたなか、商工会を介して4 社が連携し、それぞれの強みを活かしたイベントづくりがスタート。ランチやメイクといった親しみやすい要素を取り入れ、参加者が気軽に足を運べるカジュアルなイベントを目指した。
イベントの告知は、まちゼミのパンフレットをはじめ各社のSNSやホームページを活用。なかでもパンフレットの反響は大きく、事前予約の受付開始からわずか15分で参加の予約枠(計12 枠)が埋まるなど、地域住民の関心度の高さがうかがえた。当日は4 社が分担して運営にあたり、クレアーレでは藤塚社長1 人で対応した。
参加者は全員70 歳代以上の女性で、ランチやメイクだけでなく、遺影写真自体に強い興味をもつ人が多かった。イベント後のアンケートで「葬儀の資料がほしい」と記載した参加者には、遺影写真を収めたUSBを藤塚社長自身が自宅に手渡しに行った。その甲斐あって、本格的な事前相談を1 件獲得するに至った。
費用負担は1 社当たり約4,000 円。まちゼミパンフレットの掲載料や化粧品の材料費、カメラマン費用などを4 社で分担した。少ない予算ながら、参加者との関係構築に加え、実際に事前相談へとつながる成果も得られた点で、費用対効果の高い取組みとなった。会館をもたない小規模葬儀社でも、他業種と連携し既存の枠組みを活用することで集客イベントを成功に導くことができる。いますぐにでも実行可能なモデルケースといえる。
課題としてあがったのは、イベント中の「待ち時間」の過ごし方。メイクや撮影待ちの時間では藤塚社長が葬儀相談に対応するが、葬儀相談は内容がセンシティブで1 対1 の対話になることが多く、その場にいるほかの参加者を巻き込んで会話を広げることがむずかしい。そのため、手持ち無沙汰になる参加者が出る場面もあった。今後、空き時間にどう対処するかが検討課題として残った。次回以降は、管理栄養士や訪問看護ステーションとの連携を検討。空き時間に栄養相談や血圧測定といった健康・医療系のコンテンツを加えることで、参加者の満足度と滞在価値の引上げを目指す。