ビルド・トゥ・コアの視点
FOCUS|投資商品の進化 運用の戦略(試し読み版)
金利と建築費が上昇するなか、日本GLPの開発・運用基盤を生かす第5号の物流施設開発ファンドが、募集上限の6,120億円(約40億米ドル)で資金の募集を終えた。開発リスクを引き受け、テナントを誘致し安定収益を生む優良資産へと育てる。その戦略を「ビルド・トゥ・コア」の視点から捉えると、安定志向型ファンドの成長を支える役割が見えてくる。同社常務執行役員の藤岡氏に物流施設の収益性と開発の狙いをうかがった。
オルタナティブ資産運用のグローバル大手であるアレス・マネジメント(以下、アレス)は9月1日、日本の物流施設開発に特化した「Japan LogisticsDevelopment Partners V LP(JDP V)」の最終資金募集を終了したと発表した。借り入れを含む運用資産総額は約1兆7,000億円を見込み、すでに総額約4,500億円の開発案件への投資を決定している。案件の開発・運営は、アレスの物流不動産ブランド「Marq Logistics」が担う。出資者には世界の年金基金、政府系ファンド、保険会社などが名を連ねる。
今回のファンドは、開発段階から投資し高リターンを狙うものだ。アレス傘下で日本国内での開発・運営を担う日本GLP常務執行役員の藤岡洋介氏はその位置づけを「コア型の市場をこれからより大きくしていくための器」と説明する。開発した施設を売却する際、買い手が将来の収益成長を評価しなければ、開発側も期待する価格を実現できない。安定収益を求めるコアファンドの取得需要と、開発ファンドの収益性はつながっている。
「先進的な物流施設は、引き続きコアファンド投資家からのニーズが強い」(藤岡氏)。建築費や金利が上がっても大型ファンドに資金が集まった背景には、物流施設の賃料と収益の成長に対する投資家の評価があるという。開発・入居者誘致のリスクを取り、その先の長期運用に適した資産を供給する点に、コア投資との接点がある。
物流施設は、景気にかかわらず続く生活必需品の消費や、電子商取引の配送を支える。藤岡氏は、年金基金や保険会社など、長期に安定した収益を求める投資家との相性を強調する。同時に、長期契約で賃料を固定するだけでは、インフレに対応しにくいとも認識している。
「消費者物価指数(CPI)の変動に応じて賃料を改定する仕組みを盛り込むなど、契約更新時に市場環境を反映できる契約体系を取り入れている。同時に、入居企業の物流効率化や省人化、生産性向上による事業価値向上の支援にも継続的に取り組んでおり、適切な賃料設定はそうした価値提供とあわせて実現されるものと考えている」(同氏)。
既存物件には、現行賃料と現在の市場賃料との差であるレントギャップもある。建築費の上昇により、新築施設で採算を確保するための賃料水準は高まる。それが既存施設の賃料を見直す際の比較対象となり、収入を伸ばす余地を生む。「レントギャップに追いついていくことが、既存のインカム型ファンドの成長ドライバーの一つ」(同氏)という。
さらに同氏が注目するのは、入居する物流会社が賃料の増加分を荷主向けの物流料金に転嫁できる構造だ。最終的に荷主や消費者が値上げを受け入れることが前提となるが、物流会社だけが負担を抱え込むとは限らない。「インフレが続く限り、市場環境や施設価値の向上を賃料に反映しやすく、中長期的な収益成長が期待できる資産だと思う」(同氏)。短期の上昇率だけでなく、賃料成長の持続性に期待を寄せる。
投資エリアは、引き続き首都圏と関西圏を中心とする。藤岡氏によれば、同社施設のテナントの約95%は国内消費地向けの配送を担う。そのため人口の多い地域が投資の主軸となる。一方、当日・翌日配送の需要に応じ、名古屋や福岡など地方中核都市にも展開する。配送時間を短縮する拠点が必要かどうか、具体的な需要を見極める方針だ。
もっとも、物流施設ならどこでも同じ成長を得られるわけではない。藤岡氏は、供給が先行して空室が増えた地域にも触れ、「需要が底堅く、競争力の維持が期待できるマーケットやプロダクトを中心に開発を進める」と話す。資金量に合わせて用地を広く買うのではなく、需要と施設の競争力から投資先を選ぶ。
施設の差別化を担うのが、複数棟を集積する大規模物流施設群「ALFALINK」である。荷物が各地の小規模施設に分散していれば、トラックは何カ所も回って積み込む必要がある。集約拠点で荷物をまとめられれば、積載効率を高め、移動時間や輸送コストの削減につながる。
「効率化できる点が評価され、ALFALINKは高い稼働率を維持できているのではないか」(同氏)。床を貸すだけでなく、入居企業の物流業務を効率化する価値を提供する。その価値が継続利用を促し、安定稼働を支えるという考え方だ。
8月に発表した川崎市のJFE保有地での計画は、冷凍冷蔵型のALFALINKとして総投資額約3,000億円を見込む。こうした大型案件を複数手がけるには、多額の資金が必要となる。「一つのプロジェクトへの資金集中を抑え、分散投資をする意味でも、大きなファンドは不可欠」(同氏)。大型化は開発余力を確保するとともに、特定案件に投資が偏ることを抑える狙いもある……
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ALFALINK 川崎扇島
物流施設11棟と共用棟で構成。冷凍冷蔵物流施設も整備する
藤岡 洋介氏
常務執行役員