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宮寺之裕氏[ククレブ・アドバイザーズ]に聞く

CREへの投資機会をテックで発掘
市場に優良案件を供給

FOCUS|タイト化する取引市場 投資の「狙い目」(試し読み版)

ファンドにとって企業不動産(CRE)は魅力的である。
だが、有効な発掘手法がなく、もどかしさを感じるプレーヤーは多い。
CREを不動産テックを使って開拓するククレブ・アドバイザーズに話を聞いた。

資本効率改善や
サプライチェーン再編の流れが続く

ククレブ・アドバイザーズは、20億円以下の“コンパクトCRE”をメインターゲットに、クライアント企業の経営課題に紐づいたCREに関する多種多様なニーズに対して、ソリューションを提供する会社だ。取り扱うCREは物流施設や工場などが中心。ソリューションとしては、単純に取引を仲介するケース、自らCREの買い手となり遵法性を確保したうえで売却するケース、大規模案件や開発プロジェクトをファンド形式で商品化するケースなどがあり、いずれも引き合いが絶えない状況。2023年3月に東証が資本コストを意識した経営を要請して以降、上場企業の資本効率への意識が高まり、遊休資産の利活用・売却が加速しているためだ。「この流れはいまも続いている。メーカーなどによるサプライチェーンの効率化・再構築の動きも後押ししている」と代表取締役の宮寺之裕氏は話す。

 

同社のシンクタンク部門「ククレブ総合研究所」によれば、2025年度に資産売却を実施した上場企業は115社[図表]。前年度の100社比で約1.15倍と伸び率は小幅ながら高水準を維持している。26年度(4~7月)も高ペースで推移しており、この流れは当面続く見通しだ。

 

 

業種別にみると、製造業や小売業は継続して資産効率向上を企図した売却ニーズがあるほか、近年では食品や卸関連が目立つ。「一部の工場は製造ラインの更新時期を迎え、新設・移転を検討するなかで旧工場を売却したいという相談が多い。建築費高騰を受け、他施設を居抜きで取得しリノベートしたいという売買・賃貸ニーズもある。また、特に卸売業においては、自社またはグループ利用の本社・事務所の移転や、セール&リースバックを伴う売却事例が確認できる」(宮寺氏)。このほか投資ファンドやPEファンドのカーブアウト案件で、中小規模の倉庫や工場が持ち込まれるケースも多い。買い主はエンドに近い事業法人が中心で工場の新設・居抜き利用はその好例だ。流動性の高い売買・賃貸案件には、ファンドなどのプロ投資家が名乗りを上げることもある。

 

エリアは全国に及ぶ。買いニーズでは、半導体ならTSMCが拠点を構える熊本・九州一帯、千歳~札幌周辺ではラピダス関連の需要も多い。部品メーカーや物流会社の拠点需要は東名阪、九州、北関東に多く、交通の要衝や幹線道路沿い、工場・倉庫の集積エリアが中心だ。 不動産投資マーケットは国内外投資家の資金が集まり、オフィスや住宅を中心に価格が高騰、ソーシングは難航している。一方、コンパクトCREは数年前と比べ価格の上昇は緩やかだ。「CREは売り主との条件交渉、売却後の移転先確保、リースバックなどのスキーム構築に手間がかかる。とくにコンパクトCREは規模のメリットを享受しにくくプレーヤーが限られるため、激しい取得競争を回避できている」と宮寺氏は話す。

不動産テックによる解析・マッチングで
案件開拓をサポート

コンパクトCREは競争が激しくない反面、案件情報は広く流通していない。企業が保有する工場や倉庫は、売却意向が顕在化する前は市場に出てこないことが多く、従来型の仲介網や営業活動だけでは売買ニーズの掘り起こしに限界がある。とりわけ全国に分散するCREでは、企業ごとの保有不動産や財務状況、事業戦略を一件ずつ調査し見極める必要があり、膨大な手間がかかる。

 

こうしたCRE特有の「見えにくい案件」を効率的に発掘し、売り主と買い主を結び付けるために同社が活用するのが不動産テックだ。そのCREコンサルティング基盤として自社開発したのが、CCReB AI(ククレブAI )とCCReBCREMa(ククレブクレマ)である。自社利用に加え、SaaSとして他社にも提供する。不動産会社や金融機関、仲介・コンサルティング会社、建設会社などが導入しており、ククレブクレマのユーザー数は680アカウント(26年5月末時点)とサブスクリプション開始前の151アカウント(23年8月末時点)から順調に増加している。

 

その機能を詳しく見ると、ククレブAIは上場企業が開示する有価証券報告書や中期経営計画、財務データなどをAIエンジンで解析し、企業の不動産売却・取得ニーズをスコアリングするCRE営業支援システムだ。主要な固定資産を所在地や簿価とともにリスト化して売買の可能性がある企業を抽出し、営業先の選定から企業分析、提案準備までを効率化する。非上場企業の分析にも対応する。

 

ククレブクレマは、事業用不動産の売買・賃貸・有効活用ニーズを結び付けるマッチングシステムだ。物件所在地や規模、用途などを登録すると、条件に合う物件や売り主/買い主候補を抽出する。企業名を伏せ所在地情報の粒度を調整するなど、CRE特有の秘匿性にも配慮した。社内外の情報管理に加え、担当者・部門別の案件進捗や営業実績を管理する機能も備える。

なお、ククレブAIでは現在、生成AIを活用した壁打ち機能の実装準備を進めている。「ククレブAI で得た情報を基に、どんな切り口で提案すれば有利か、近隣に類似物件があるかなどを自在に相談できる。自社で蓄積した不動産データベースを読み込ませて分析することも可能」(宮寺氏)。

 

自社システムを惜しみなく他社に提供する背景には、民間保有の不動産だけで約524兆円という市場規模がある。コンパクトCREだけでも約60兆円規模にのぼり、その潜在的な流動化余地は極めて大きい。「当社だけで市場を担うという発想ではなく、多くのプレーヤーとともにCRE市場の発展を後押ししたい。当社のコンサルティング機能に加え、システムを広く活用いただくことで、CREの流動性向上と不動産金融マーケット全体の活性化に貢献したい」と宮寺氏は話す。


宮寺 之裕
代表取締役

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