中村祐正氏[武蔵野銀行]に聞く
TREND|存在感増す「地銀」(試し読み版)
市場では依然として投資需要が底堅く推移しており、不動産ノンリコースローン市場では従来のプレイヤーに加え、地方銀行もストラクチャードファイナンス機能を強化し、本格参入する動きが活発化している。その代表例が武蔵野銀行だ。地銀広域連携「TSUBASAアライアンス」を活用しながら、宿泊施設をはじめ幅広いアセットへの融資を推進する同行に、その戦略と融資スタンスを聞いた。
同行では不動産ノンリコースローンを含むストラクチャードファイナンス部門の体制整備を2025年春ごろから進め、同年10月より本格的な営業活動を開始。2026年6月末時点の不動産ノンリコースローン関連残高は計15件の約181億円。資産タイプ別の比率は、ホテルが44%、オフィスが16%、商業施設が16%、住宅が11%、物流施設が13%。
借り手である投資家の主体は、国内ファンド。その他、地域一般事業会社や外資系ファンドなどがみられる。 体制整備の背景には、借り手側の資金調達ニーズの多様化・高度化に加え、金利上昇局面での収益源多様化の必要性があった。これまでも個別案件への対応実績はあったが、専門人材を配置したストラクチャードファイナンス体制を整備し、取り組みを本格化させた。「顧客ニーズの多様化、高度化によって、当行においてもストラクチャーを活用した資金調 達ニーズが拡大している」と法人コンサルティング部 法人営業グループ ストラクチャードファイナンスチームの中村氏は話す。
対象アセットはレジデンス、オフィス、商業施設、物流施設、ホテルなど幅広い。特定アセットに偏らず、すべてのアセットタイプを検討できる。「得意アセットを絞らず、あらゆるアセットタイプを検討できることが当行の強み」(同氏)。
ローン取扱い金額は10億~30億円程度が実績として多く、地盤の強い埼玉県内案件や大型案件ではそれ以上の規模にも対応してきた。
開発案件については、金利上昇局面を踏まえ慎重なスタンスを取る。重視するのはLTVとスポンサーの信用力、そして出口戦略の蓋然性だ。既存物件ではトラックレコードを重視し、安定したキャッシュフローの有無を確認する。また、レジデンスをホテルへ転用するコンバージョン案件など、リポジショニングを伴うバリューアップ案件にも積極的に対応している。
同行の特色の一つが、地域金融機関の広域連携組織「TSUBASAアライアンス※1」の活用だ。これまで同アライアンスを活かし、ノンリコースローン融資を先行する地銀や、メガバンクが組成した 案件へ参加しながら知見を蓄積してきた。
※1 千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行、伊予銀行、東邦銀行、北洋銀行、武蔵野銀行、滋賀銀行、琉球銀行、群馬銀行の10行が参加する地銀広域連携の枠組み。システム共同化や人材交流に加え、ストラクチャードファイナンスなど高度金融分野でも連携を進めている
こうした姿勢を象徴する案件が、大阪市浪速区のバケーションレンタル施設を対象としたノンリコースローンだ。同アライアンスの枠組みを活用し、第四北越銀行と協調して融資を実行した。同事業は、同行にとって初の関西エリア案件であった。「大阪市場に関する知見不足を補うため、アライアンス内で同地域に支店を有する第四北越銀行と連携し、地域情報や市場動向の把握を進めた。また、バケーションレンタル施設は宿泊施設としての運営力や行政許認可の適正取得が重要となるアセットのため、融資検討にあたっては、旅館業法等に基づく許認可の確認を重点的に実施するとともに、アライアンスの知見も活用しながら案件を進めた」と中村氏は振り返る。

大阪市浪速区のバケーションレンタル施設
武蔵野銀行では今後も、埼玉県内案件を重点領域としながら、アセットタイプやエリアを限定せず不動産ノンリコースローンを拡大する方針だ。同行は中期経営計画において、ストラクチャードファイナンス残高を2030年までに2500億円へ拡大する目標を掲げており、不動産ノンリコースローンを成長分野の一つに位置付けている。「今後もアセットタイプを限定せず、地域銀行ならではのネットワークを生かしながら、不動産ノンリコースローンを拡大していきたい。また自ら案件を組成するアレンジャーとしての役割も視野に入れ、フロント部門だけでなく審査部門とも早い段階から議論し、スピード感を持った案件対応を実行していく」と中村氏は意気込む。

中村 祐生氏
法人コンサルティング部 法人営業グループ
ストラクチャードファイナンスチーム
調査役