大和リアル・エステート・アセット・マネジメント
VIEWPOINT|差別化の「策」
大和リアル・エステート・アセット・マネジメント(DR)は、賃貸住宅及びヘルスケア施設を投資対象とするJ-REIT「大和証券リビング(DLI)」において組入れ資産の「選択」と「集中」を進めている。狙いは運用ポートフォリオの強化だ。インフレ環境への適応を前提に、より賃料成長を享受しやすく、また将来的な売却益の源泉となる資産へ投資をシフトしていく考えである。具体的には、都市部に立地する築浅住宅を積極的に取得。一方で、地方所在の築古住宅または修繕費が同時期に重複して発生しないよう、ポートフォリオの築年数をコントロールする。対象となった物件に加え、ヘルスケア資産の売却を進めている。「金利は上昇後、中立金利に到達したところで安定し、年率2%程度のインフレが継続する」との前提に立ち、「賃料改定余地の大きい築浅住宅の比率を高めることが、ポートフォリオ全体の成長性を底上げするうえで合理的である」(取締役 兼 投資運用本部長 阿部淳氏)と判断した。
とりわけ踏み込んだのはヘルスケア資産の整理である。2025年9月期から2026年3月期にかけて計11物件(売却額156億円)を売却した。
ヘルスケア施設は内部成長に構造的な制約がある。介護報酬の伸びは年2~3%にとどまる一方、運営コストの上昇が続き、オペレーターの賃料負担力は伸びにくい。また長期固定のリース契約が前提となるため、インフレ連動や賃料改定条項があっても、その実効性は限定的だ。「結果として投資口価格のバリュエーションの重しになりやすい」(阿部氏)と判断した。
直近1年間(2025年9月期及び2026年3月期)の売買実績を見ると、取得した12物件の平均築年数は2.5年(2026年3月末時点)。首都圏・関西圏を中心に、仙台など一部の政令指定都市にも厳選投資を行い、シングルからファミリータイプまでバランスよく組み入れている。一方、売却した地方都市所在の賃貸住宅9物件売却の平均築年数は20.2年。物件の入替を通じて、ポートフォリオ全体の築年数は着実に改善している。ヘルスケア11物件についても、立地や築年数など踏まえ選別的に売却した。
こうした機動的な資産入替えを可能にしているのが、ウェアハウジング機能を持つ大和証券リアルティが保有するパイプラインとDRの高いソーシング力である。パイプラインは28物件・約500億円規模(2025年11月末時点)に達し、平均築年数は0.7年と極めて若い。首都圏の賃貸住宅を中心に、住戸タイプはファミリーとワンルームが6:4で構成される。
ソーシング面では、非デベロッパー系AMである点も強みだ。物件取得はフォワードコミットメントを軸とし、既存ポートフォリオの稼働率や実際の賃料データを活用しながら、協力デベロッパーに対してトレンドを反映した間取りや仕様を具体的に提示する。「親会社主導の開発ではなく、AMとして投資運用の視点から商品設計に踏み込んでいる点が優位性になる」(阿部氏)。
外部成長と並び、内部成長へのコミットメントも際立つ。運用資産は236物件、取得価格ベースで約3,922億円(2026年4月末時点)と国内最大級の規模を誇る。このスケールを背景に、日次データを活用した精緻なマーケティングを展開している。加えて、AM会社としてPM・BM会社と直接対話し、現場の定例会議にも継続的に関与するハンズオン運用を徹底。迅速な意思決定と改善サイクルを回している。その結果、2025年9月期の賃料上昇率は、入替時で+10.7%、更新時で+2.2%と高水準を記録した。
施策の一部を担うのが、部屋単位のリノベーション拡大である。採算ラインを見極めつつ対象を広げ、2025年9月期は33戸、投資額1億4,600万円で入替時賃料+39.9%を達成した。今後は投資額を引き上げ、対象戸数のさらなる拡大を図る。
組織体制も強化している。フロント業務担当者が賃料戦略やリーシングに専念できるよう、ミドル・バック機能を増強。人材はAM、PM、BM、仲介出身者を中心に即戦力を採用し、チームとしての育成を進める。また、外部委託先についても系列に固定することなく、パフォーマンスに応じて機動的に見直す。 こうした一連の取り組みにより、巡行分配金利回り4%台中盤という競争力を維持する。「インフレ下の金利上昇局面においても、それを上回る内部成長を実現し、投資口価格の回復と持続的な外部成長につなげていく」と阿部氏は展望を語る。

阿部淳氏
取締役 兼 投資運用本部長