三井物産デジタル・アセットマネジメント
【試し読み】
三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM)は、ST商品「ALTERNA(オルタナ)」シリーズをラインナップしている。オルタナの顧客層は30~60歳代の現役世代が主体で「株式や投資信託、ETFなどの投資経験を有し、ST商品をディフェンス性の高い資産と位置付け、分散投資の一環として組み入れる投資家」(取締役 丸野宏之氏)が中心である。
昨今の不動産価格の高騰による利回りの低下、不動産特定共同事業法に基づく小口化ファンドの不祥事など市場にさざ波が立つなかであるが、同社にとっては「影響は軽微」(丸野氏)という。事実、直近の2025年12月に募集を開始した「東神田テラスレジデンス」では、利回りが約3%とタイト化したにも関わらず約1時間で先着枠である10億円が完売している。
これは、STという金商法に基づいた情報開示性の高さが他の不動産小口化ファンドと大きく差を付けていること、またMDMの当初想定利回りを上回る運用実績があること、さらに三井物産グループの運用会社である信用力が際立ち、強力な差別化となっているためだ。
またSTであることは、上場不動産投資信託(J-REIT)との比較でも日々投資口価格が変動しないことが好評価されている。投資口の流動性はJ-REITに劣るが、投資口を取引できるセカンダリ市場「大阪デジタルエクスチェンジ」が存在し、MDMでも投資口を買取ることが安心材料となっている。

運用資産は、オフィス、住宅、ホテルが中心で、1案件あたり資産規模は約30~300億円。多くは都心一等地に所在、100億円超の“リータブル”な大型物件も含まれる。これは「従来、機関投資家が投資してきた“ プロ向けの案件”に個人投資家がアクセスできる環境を整えていきたい」(丸野氏)との考えを反映したものだ。
具体的には、都心部マンション「東神田テラスレジデンス」(匿名組合出資持分)、都心部ホテル「汐留タワー」(ホテル部分の区分所有権)、都心部オフィスビル「名古屋プライムセントラルタワー」(区分所有権)、地方温泉旅館「SOKI ATAMI」、住宅地商業「宮前ショッピングセンター」がある。いずれもJ-REIT品質をもつ大型資産と言える。
また、特徴的な点は「SOKI ATAMI」のような温泉旅館も含まれること。理由は、規模や品質のみならず「その資産の“ 知名度” に加え、自分が利用する感覚で“ 解像度” を持ってもらえる資産であることが重要」(丸野氏)と考えているためだ。想定利回りは、都心の住宅で3.0~3.6%、観光地の旅館・ホテルで3.2~4.3%、商業施設で4.5~5.2%が目安となる。
MDMは、不動産STを中核に商品組成・販売を継続し、2030年度の販売額を25年度比4倍の1,000億円程度に伸ばす目標に掲げる。成長を加速させる鍵は、垂直統合型の組織体制と、デジタル化による低コスト・高効率な運営にある。
組織面では、商品組成・販売・運用をグループ内で一貫して内製化。第一種金融商品取引業者として自社で販売プラットフォームを運営し、ST商品を直接販売している。さらに2025年7月には、三井住友信託銀行との合弁でデジタル証券に特化した信託会社「オルタナ信託」を設立し、商品組成の機動力と安定性を高めた。
運営面では、AIを活用して管理・運用業務を効率化し、1人当たりの運用物件数を拡大。取得局面でも「取引を着実に進められる相手先」として評価を高めており、案件情報取得から最短2カ月でクロージングに至った実績もある。加えて、有価証券届出書などの開示業務もAIで半自動化し、属人的だった業務を効率化した。
こうした取り組みにより、AMフィーは約20bpsと業界最低水準を実現。「AMフィーや組織体制の強みを生かすことで、ファンド組成の“論点”を減らし、物件を取得しやすくしたい」(丸野氏)という。
今後は、不動産のエクイティにとどまらず、デットやインフラ案件のST化も視野に入れる。金利上昇などを背景に、まずはシニア・メザニン投資商品や、成長企業向けの貸付・社債などの取り扱いを検討する考えだ。インフラ案件については課題も多いが、個人投資家からの要望も多く、「時間をかけて地道に開拓していきたい」と、丸野氏は展望を語った。