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【インタビュー】潟Eェルビー 代表取締役 米田行孝氏
「カルチャー」としてのサウナの定着に向け
新たな研究開発に挑戦

  • レジャー産業
  • サウナ
  • 健康増進
――冒頭に、あらためてこのたびのコロナ禍についておたずねしますが、「サウナ&カプセルホテルウェルビー」を全国4か所に展開される貴社としてはどのような影響を受けましたか。
米田  コロナ禍が最初に襲来した2020年は、それまでの10年間小さく稼ぎながら貯めてきた利益をすべて吐き出した1年でした。行政からの一時休業の要請もあり、また開業しても宿泊需要はゼロの時期も続きました。コロナ禍以前は週末は確実に満室で、平日も平均5、6割稼動だったのが大幅減で大赤字となりました。
 翌21年の前半はそのまま大きな赤字が継続したものの、年末の緊急事態宣言解除以降は、コロナ禍前の状態まで取り戻し、宿泊もフル稼動の日もあるなど復活しました。
 しかし、年が明けたちまちオミクロン株の感染拡大で再びダウン。現在に至っても宿泊部門は完全には以前の状態に戻っていません。今後も出張需要などは急速には復活しないものとみられるので、厳しい状況が続くのではと予想しています。
――その一方でサウナ業界全体で「ブーム」といえる状況もあったかと思います。これについては、どのようにご覧になっていますか。
名古屋の中心街で長く運営する
「サウナ&カプセルホテル ウェルビー栄店」
米田  確かに依然コロナによる厳しさが続くなか、「ブーム」のおかげでなんとか生きながらえている状況です。
 ただ振り返って考えると、そもそも20年ほど前から、男性を中心にサウナ利用者のコア層を形成していた団塊の世代の先細りが続いています。こうした構造変化が明らかななかで、ブーム下にあるとはいえ、サウナのもつ「カルチャーとしての本質」というものが世にきちんと伝わっているのかという意味では危惧しています。
 つまりサウナを1つの事業、ビジネスモデルとだけで考えると、自分の会社を起点とした限られた視野にとどまってしまう。しかし重要なのは、顧客側です。まだ隠れているサウナの潜在顧客にサウナの魅力を知っていただき、利用してもらうかという視点から、サウナはどうあるべきなのか、ということを考えることが大切だと思います。当社としてもそのための実験に取り組ん>でいるところです。
――「サウナ&カプセルホテルウェルビー」とは別の新ブランド「サウナラボ」としての活動ですね。
「サウナラボ神田」。男性用エリアでは3種の個性的なサウナ室を設ける
米田  はい。店舗側からというよりお客様側からの視点で、日本のサウナはどうあるべきなのか、正しいサウナというものはどんなに素晴らしいものなのか、ということをお客様に気づいていただき、サウナ体験を広げていってもらうための活動という位置づけで取り組んでいるのが「サウナラボ」なのです。すでに名古屋、福岡、東京の3都市で拠点を展開していますが、これは収益事業というよりも、都市部のめまぐるしく精神的ストレスの多い生活で心身ともに疲弊する方々に向けて、サウナを通じて身体的な感覚を取り戻してもらうとともに、まちづくりにも寄与する拠点の1つにしたいとの思いで運営しています(「サウナラボ神田」は本号92ページにて掲載)。
 サウナ&カプセルホテルウェルビーに関してはこれまでは男性顧客中心の業態として運営を続けてきたわけですが、先に申し上げたとおり、主要な団塊世代が先細りしていくなか、従来型のサウナ業態からの転換が不可欠です。そのためにサウナラボで若い女性層の獲得を含め、先進的な実験研究を行ない、その成果をこちらにもフィードバックしていく流れをとっています。
 つまり古いものと新しいもののよさを融合するという試みをこの2つの業態で並行しながら進めているという状況です。

協会の活動を通じ正しいサウナの知識の普及を

――両者それぞれの強みを融合していくことで男性、女性や年代を問わずサウナの魅力の創造、発信に取り組んでいくということですね。一方、業界を見渡すと新たなサウナの形もさまざまに登場してくるなかで、その1つとして現在、貸切個室型の「ソロサウナ」も伸長していますが、こうした動きはどのように見ていますか。
米田  ソロサウナは、とりわけコロナ禍のなかでの感染対策という意味でも、まさに時代が生んだ必然性のある新しいサウナの形だと思います。
現在のブームを支えるのは、大きく分けて自分に向き合う静的なサウナと、楽しさを提供する動的なサウナの両方があると思います。そのなかで、どうしても後者に目が行きがちですが、実際は自分と向き合うサウナへのニーズにも高いものがあります。なぜなら今日のような「不安の時代」だからこそ、心の安定を取り戻すための時間、空間を提供するものとしてのサウナの役割があり、ソロサウナはそのための1つの新しい提案として注目、評価されているものと考えます。
――こうしたなか、新しい世代の若手のサウナクリエイターの活動も活発になってきていますが、どのような期待がありますか。
2019年の「サウナフェス」がターニングポイントに
米田  15年からはじまった「日本サウナ祭り」を起点として、サウナに関わるさまざまな人たちがつながることで今日のブームが形成されてきました。自分も含め昔からサウナに携わってきた古い人たちのアイデアだけでは潜在的なファンを掘り起こすことは困難です。新しい人の力もどんどん借りながら、みんなでこれに取り組んでいくことが重要で、そうしないと新しいものは生まれてこないと思います。
 そうした考えで19年はFSC(フィンランドサウナクラブ)に参加していた若い人たちが自分たちでどんどんサウナをはじめるなど育ってきたことから、自分たちから彼らに実行委員会として運営を移管したほうが広がりも生まれるだろう、と考えました。そこが転機になり同年、日本サウナ祭りから名称も変更した「サウナフェス」は大きなにぎわいとなったのですが、翌20年のフェスはより大々的に行なわれる予定だったものがコロナで逆転してしまったのは残念です。
――一方、昨今のブームを反映して、急激な店舗の増加が続いていますが運営における安全面の確保などで不安など感じられることはありませんか。
米田  われわれのような古くから業界に携わる人間の責務としてやるべきことは、安全面などの知識を次世代の経営者に正しく伝えることだと思っています。その意味では公益社団法人日本サウナ・スパ協会が重要な役割を果たしていくでしょう。
 たとえばサウナのもつメリット(効能など)、デメリット(危険性など)をしっかり知ってもらうことです。それを担う「サウナ・スパ健康アドバイザー」も、すでに2万5,000人までふえてきてその役割を果たしています。さらにこれを事業として行なう「プロフェッショナル」も含め、この4、5年で3万人規模にまで拡大しています。
 次は実践的な部分も含めた資格制度をつくり、安全基準を定義していくなど、営利法人ではなく公益法人である協会が正しくこのカルチャーを広げていく役割を担っていくことが重要になると考えます。

サウナというカルチャー体験を届けられる移動システムを開発

――貴社としての直近の取組みや今後の展望をお聞かせください。
移動式の「トースターサウナ」も自ら開発
米田  当社の「街にサウナという木を植え森を育て、人々に元気を届けます」という理念の具現化という意味では、車でけん引できるコンパクトな移動式の「サウナトースター」を開発し、東北地方の震災復興の場にもお届けしてきましたが、昨年その第2弾として、4tトラックの冷凍車を改造し、サウナやアイスサウナなどを備えた「サウナフリーザー」もつくりました。ここではウィスキングもできるなど、まさにカルチャー自体が移動するような、本格的な内容としています。
 カルチャーとしてのサウナを広めるために現在特に力を入れているのはこのウィスキングです。白樺の若い枝葉を束ねたヴィヒタで全身を叩いたり、押し当てたりするマッサージで、アロマ水による香りによるリラックス効果も含め、「ととのう」の先の「ととのう」を実現するものとして、現在のブームのさらに奥深くにあるニーズを掘り起こす可能性があると考えています。
 現状ではまだ十分定着していませんが、その普及のためのイベントも仕掛け、今後10年、20年をかけてでもこのカルチャーを育て、定着させていきたいと考えています。ウェルビーとしては、これからもサウナのもつ価値をより多くの人々に体験してもらえる機会を積極的に創出していきたいと考えて取り組んでいきます。
――本日はありがとうございました。
<そのほか、トップランナーへのインタビューや事例研究は本誌にて>
[プロフィール]
米田行孝(よねだ・ゆきたか)
サウナラボ/潟Eェルビー 代表取締役。名古屋市生まれ。公益社団法人日本サウナ・スパ協会専務理事。フィンランドサウナクラブ会員。名古屋市、福岡市で「サウナ&カプセルホテルウェルビー」を4店舗。名古屋市、福岡市、東京都千代田区神田に「サウナラボ」3店舗を展開する。
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