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[寄稿:澤田竜次 PwCコンサルティング合同会社 リアルエステート&ホスピタリティ パートナー]

アフターコロナに向けたホテル事業再構築

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いまだ続くコロナとの逆相関関係

 本稿を執筆している2月上旬の段階で、全国の感染者数は10万人/日を超える状況となっており、割合としては低いものの重症者数も増加を続けている。マスメディアで報じられる医療体制のひっ迫度などを考えると、これまでの経験上、宿泊需要は当面停滞することが見込まれる。コロナ禍が2年経過するなかで、マーケット環境は引き続き感染者数(または重症者数)と需要(=延べ宿泊者数)が逆相関して推移する状況[図表1]が継続している。
 過去2年からも明らかなとおり、2020年4、5月の最初の緊急事態宣言中を除き、感染者数の上昇に伴い、一定の割合(約30%)の人々が行動を抑制することで、宿泊需要が減少・低迷する傾向にある。この傾向は、緊急事態宣言やGo Toトラベルキャンペーンの有無に関わらずみられ、欧米のような強制的な行動制限がないなかでも、個々人の判断で移動や宿泊を控える傾向が続いている。また、当然のことながら、需要とホテルのパフォーマンス(=RevPAR)には高い相関[図表2]がみられることから、結果的にコロナの感染の波や重症化が抑えられるか、またはコロナが一般的なインフルエンザ化するまでは、このサイクルは続くと想定される。
 コロナ禍における需要の消失は、ホテル事業者に未曽有の危機的状況をもたらしているが、現時点では倒産件数では大幅な増加には至っておらず[図表3]、政府や金融機関の各種支援策の強化が倒産抑止につながっていると考えられる。コロナ禍で売上げが落ち込んだ企業は、実質無利子・無担保融資や持続化給付金などの緊急支援策を受けられるが、コロナ禍の長期化により政府系金融機関による劣後ローンや優先株といった資本性の資金調達を採り入れる動きも出てくるなど、資金繰り的には一息つくものの、財務面では、利益剰余金の減少や自己資本比率の低下[図表4]という形で、コロナ後の後遺症となって残ることが懸念されている。また、現時点においては金融機関等による資金支援策は継続が見込まれるものの、銀行にとっては与信費用の積み増しにもつながるため、今後の支援についてはこれまで以上に慎重な姿勢になっていくと思われる。

特殊な環境下で進む需要発掘。開発・投資は二極化へ

■運営および開発の状況
足元では、厳しい業績を背景に、各社ともアイデアを出し合いさまざまな取組みを行なっている。これまでとは異なる需要を発掘するという観点から、長期宿泊需要の取込みや、また、ノマドワーカーらを対象としたサブスクリプションプランや在宅ワーカー向けのデイユースプランなどの造成といった動きがみられる。ただし、これらは通常の需要が激減するなかで、一定の稼動を確保し、少しでも固定費を回収するという観点では重要な施策といえるものの、あくまでコロナ禍という特殊な環境下での商品企画であり、アフターコロナにおいては、設備やサービスの見直し、販路の開拓等、抜本的な見直しが必要になってくるであろう。
今後の開発については、全体的には慎重な姿勢が強く、当面は開発件数の減少が想定される。特に、コロナ前に最も供給量の多かった宿泊主体型ホテル(いわゆる「ビジネスホテル」)の開発は今後大きく減少すると見込まれる。一方で、今後増加が予想される富裕層向けの高価格帯ホテルや、投資・開発資金を早期に回収できるコンドミニアムホテルやラグジュアリーレジデンス、または会員制リゾートホテルについては開発が継続すると思われる。

■再生およびM&A・不動産売買
先述のとおり、倒産件数は低い水準で抑えられていることから投げ売りのような状況は起こらず、投資家が期待するほど、不動産や事業の価格が下がっていないことから、現状、M&Aの件数も想定ほど伸びていない。もちろん、これまでにないようなディールもいくつか表面化しており、大手海外系ファンドによる鉄道系のホテル不動産の買収案件やかんぽの宿の買収、三井不動産鰍ノよる東京ドームシティの買収、星野リゾートグループによるグランドハイアット福岡の経営権の取得等が明らかになっている。コロナ環境下も3年目に入るなか、金融機関にとっては与信費用の増加が懸念されること
から、むずかしい判断を求められるケースが出てくるであろう。したがって、今後どの程度M&Aや不動産売買が進むかは金融機関のスタンスによるところが大きいと考えられる。
これより先の
・需要回復シナリオおよびアフターコロナでの需要
・ホテル事業者に求められる3つの強化ポイント
・構造改革に向けた視点
等は本誌20頁〜24頁にて
[プロフィール]
澤田竜次(さわだ りゅうじ)
PwCコンサルティング合同会社 リアルエステート&ホスピタリティ パートナー
金融機関にて、融資業務および資本市場からの資金調達に絡むファイナンシャルアドバイザリー業務を経験した後、2000年4月に会計系のコンサルティンググループに入社。財務戦略担当リーダーとして、主としてM&A戦略、企業再編・再生関連ビジネスを経験した後、07年1月よりホテル部門の立上げを主導し、ホテルおよび不動産事業会社に対する戦略コンサルティング業務およびホテルの開発・売買時におけるアドバイザリー業務を提供。16年1月より現職。主として不動産、ホテル・旅館、テーマパーク、レジャー産業のクライアントに対して、事業戦略立案支援から当該戦略の実行支援(CRM・HR・ITの構築サポート)までのコンサルティング業務、およびマーケット・フィージビリティスタディ、ホテルコンセプト策定支援やオペレーター選定支援等の不動産開発関連アドバイザリー業務を提供している。
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