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コロナ禍で若年層中心にゴルフ人口拡大
リニューアル投資の好機にあるアウトドア練習場

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 コロナ禍で強さをみせているゴルフマーケット。この“フォローの風”を活かす戦略構築のポイントとは――。ゴルフビジネスプロデューサーとして活躍する外NE STORY 代表取締役社長 山ア博之氏の寄稿から、アウトドア練習場に関する最新動向を特別公開する。

コロナ禍で60万人の若年層ゴルファーが新たに誕生

 レジャー産業は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止による利用者数の減少や行政による営業時間の短縮要請に伴い、多くの業種で軒並み苦戦を強いられている。そのなかで、ゴルフマーケットはコロナ禍においても大きな影響を受けなかった数少ない産業の一つといえる。特に2020年のゴルフ練習場の売上げは116%(経済産業省特定サービス産業動態統計調査調べ)と前年を上回った。
 市場規模増加の要因として考えられるのが、コロナ禍で可処分所得を従来の余暇に充てられずにいる生活者の存在が挙げられる。これまで飲み会などの交際費や旅行などに消費していたが、この1年はそうした消費が抑えられていた。その余った時間とお金の使い道として、密を避けながら身体を動かせるゴルフへと向かった格好だ。特に、ゴルフ業界関係者からは、「若年層の参加がふえている」という声を多く聞く。これまでゴルフ業界では若年層を取り込もうと、さまざまな施策を打ちながらも具体的な効果を見出せないでいたが、図らずもコロナ禍によって一気に60万人もの若年層ゴルファー(矢野経済研究所「コロナ参入・リタイアゴルファー実態調査2021」より)を新たにつくり出してしまったのだから、なんとも皮肉である。
 本稿では、コロナ禍ながら拡大基調にあるゴルフマーケットのなかでも、「アウトドア練習場」(いわゆる“打ちっぱなし“)と「インドアゴルフ」(スクール、練習場)にフォーカスして、最新動向をみていきたい。

後継者不在で施設数の減少続くアウトドア練習場

 国内のアウトドア練習場の施設数は約2,400か所(20年10月時点)。エリア別では、人口ボリュームに比例して関東・中部・関西の3エリアが上位となっている[図表2]。各地域で新規の練習場が開発されることは極めて少なく、逆に閉鎖する施設が毎年増加、施設数は年々減少傾向にある。
 閉鎖の最大の理由は、事業の継承者不在である。練習場事業は、装置型産業のため収益が出しやすいビジネスモデルであるが、昭和40年代に開発された施設では、老朽化と利用者数減により、鉄塔やクラブハウスといった大がかりなリニューアル投資は捻出できても、減価償却期間となるこの先20年間で果たして元が取れるのかという悩みと、そしてそれを負担する後継者が不在、という2つの点から閉鎖を決断する施設事業者が多いのが特徴だ。
 その他にも、クラブとボールの進化による飛距離アップに伴う近隣住民対策(打球が敷地を越え近隣住宅に飛び込んでしまう)や、バブル期の負債を引きずったまま相続問題で悩む声も聞く。そして、20年にはコロナ禍で落ち込んだ主力事業の資金確保のために、練習場事業を売却するといったケースも後を絶たなかった。

1度目の緊急事態宣言解除以降、利用者層の顔ぶれに変化

 先述のとおり、20年の1年間で60 万人もの新規ゴルファーが創出されたわけだが、アウトドア練習場では、どのタイミングでゴルファーがふえたのか。当社がマーケティング調査を行なっている練習場の新規来場者データを参考にすると、1度目の緊急事態宣言解除後の20年6月以降、急増していることがわかる。
 新規客は本来であれば、真夏・真冬シーズンは減少する傾向にあるが、昨年は季節に関係なく来場があった。加えて、来場する層の顔ぶれにも大きく変化がみられた。若年層を中心とした新規ゴルファーが増加する一方、それまでの主力顧客であった60歳代、70歳代のゴルファーは、新型コロナに感染すると重症化リスクが高いとされたことから外出を控えたことで、顧客層の顔ぶれが大きく若返ったのだ[図表3、4]。

アウトドア練習場のリニューアルトレンド

 近年、リニューアルを実施するアウトドア練習場の動機として多いのが、従来の「練習するだけの場」から脱却を図り、「練習の質を上げる」「練習を仲間と楽しむ」「子どもたちが安心して楽しめる場にする」「地域のコミュニティハブとする」等、来場動機の多様化を見据えたものだ。これに加え、コロナ禍で来場者増により上振れした売上げを活かして、手つかずだった施設改修など、大規模リニューアルに着手する施設もある。
 実際にリニューアルを実施した施設からは、下記のような傾向がみられる。
@人による接客回避・非接触等のシステム面の改修
 緊急を要する投資であったが、スタッフの接客時間が減ったことにより、打席の清掃・消毒の徹底、スタッフの時短勤務などの生産性向上に寄与した。
Aトイレやフェアウェイのリフレッシュ投資
 女性層や新規客層の取込みを図るべく、これまで追加投資の優先順位としては低かったトイレやフェアウェイ等のリフレッシュ投資が売上げの上振れにより実施可能に。
Bトレーシングシステムの導入
 19年からサービス化しはじめた、「トップトレーサー」(ゴルフ・ダイジェスト・オンライン)や「トラックマンレンジ」(TRACKMAN)といった、打球の弾道表示と距離表示が可能なトレーシングシステムが、全国100施設弱の練習場で導入されている。
 一方、追加投資が遅れているものとしては、台風等の災害対策や予約・混雑状況などを可視化するWebサービスがあげられる。
 繰り返しになるが、ゴルフマーケットはコロナ禍で、60万人もの新規ゴルファーを生み出すことになった。今後、練習場がすべきこととしては、こうした新規ゴルファーをリピーターにすることである。シニアの常連客に向けた従来型サービスから、“金の卵”ともいえる若年ゴルファーをどう育てマーケットに取り込んでいくか。そのためには、追加投資が遅れているSNSやWebサービスという課題をクリアしなければならない。オーナーや支配人・マネジャーがより勉強と研究を重ね、実戦投入できれば、若年層のリピーター化は実現するであろう。
(「インドアゴルフ」の最新動向解説や集客のポイントは本誌にて)
[執筆者プロフィール]
山ア博之(やまざき ひろゆき)
外NE Story 代表取締役社長。ゴルフビジネスプロデューサー。スクールコーチ、練習場支配人などを経て、独立。スクールでコーチとして一人ひとりの笑顔をつくれる幸せとそのためのスクールノウハウを8年間研究。その後、ライザップゴルフのスタートアップ責任者としてゴルフ界になかった短期間で成長できるスクールノウハウの構築をプロデュース。ゴルフ練習場業界では数少ないデータマーケティング分析を行ない、既存練習場の新規来場者とリピーターをふやす活動や、他業種からのゴルフビジネス参入に対して成功するステップを伝えている
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