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新たなステージに向かうエンバーミング最新事情【インタビュー】

  • フューネラルビジネス
  • エンバーミング
一般社団法人日本遺体衛生保全協会[東京都千代田区]
代表理事 竹内惠司氏
1993年、「日本におけるエンバーミングの現状と展望」なる公開シンポジウムが開催された。その際、シンポジウムのコアメンバーとなったのが、医学者、法学者、葬祭事業者らによって創設された日本遺体衛生保全協会(IFSA)である。2009年には一般社団法人化され、国内のエンバーミング事業を支え続けている。
IFSA代表理事である竹内惠司氏に、わが国におけるエンバーミングの最新動向についてお話を伺った。

エンバーミングの適切な実施と普及目的に創設

――協会設立までの経緯と国内のエンバーミングの変遷についてお聞かせください。
竹内    当協会は、1993年に開催されたエンバーミングに関する公開シンポジウムのコアメンバーが立ち上げた自主基準研究会を母体とする任意団体として設立しました。その後、2009年に一般社団法人へと組織変更し現在に至ります。国内にエンバーミング技術が導入されたのは、川崎医科大学で献体遺体の正常解剖のための保存に使用された1974年にまで遡ります。その後、88年に国内初となるエンバーミングセンターが埼玉県内に開設され、91年に「我が国におけるエンバーミングのあり方に関する研究」が旧厚生省研究班から公表されました。
――30余年ほどの歴史になりますね。
竹内    欧米諸国にはフューネラルディレクターなる称号のもと、国内でいう葬祭ディレクターとエンバーミングの資格取得を行なう教育機関があります。一方、国内にはそうした機関は当時ありませんでしたし、エンバーミングそのものの存在すら一部関係者を除けば知らなかった。とはいえ、世界的にみればエンバーミングの歴史は古く、医学や医療器具の発展とともに、北米ではいまや8割以上がエンバーミング処置されています。
――近年、エンバーミングが注目を集めているのはなぜでしょうか。
竹内    エンバーミングには、「感染防御」「防腐効果」「修復効果」という効果があります。エンバーミング処置を行なうには、当然、消毒・滅菌処置を施すことが求められます。つまり、感染症(結核や院内感染等)に罹ったご遺体であっても、処置後は公衆衛生上、安全になるのです。そのため、ご遺族や会葬者は安心してお別れをすることができます。次に、防腐効果についでですが、エンバーミングでは、血管を通じて薬剤を注入することで全身防腐を施すことができます。これにより、慌ただしいスケジュールで葬儀を行なう必要もなくなります。
    修復効果については、たとえば闘病生活中にやつれてしまったお顔、あるいは事故や災害などで損傷された場合であっても、エンバーミング処置を行なう際に、生前の面影のままお別れをすることができるのです。
    さらに、昨今はグローバル化の進行とともに海外在留邦人、国内在留外国人、さらには旅行者等が亡くなった際に行なわれる遺体の国際搬送(インバウンド、アウトバウンドを含む)という問題にも対応しなければなりません。海外ではエンバーミングが慣例として実施されていますから、日本におけるエンバーミング技術の確立も、いずれは必要不可欠なものになったといえるでしょう。厚労省でも、諸外国の葬送事情について調査をしているそうですし、厚労省では日本でエンバーミングを行なうにあたり、外国人のご遺体の取扱いのほか、災害や感染症対策に関する知識が必要となることから、厚労省より選定された当協会が研修事業実施団体となり、IFSA協会認定エンバーマーを対象とした研修を実施する方針を出した「厚生労働省認定エンバーマー養成研修事業」として、当協会が国の補助金を受けながら研修を行なっています。ましてや、ご遺体の海外搬送(インバウンド、アウトバウンドを含む)は、これからはふえることはあっても少なくなることはありません。諸外国の葬送事情を理解し、搬送先となる国、地域の要求に応える体制をとることが、日本国にも求められているのです。
――コロナ感染遺体の対応についてはいかがでしょうか。
(続きは本誌で)

(一社)日本遺体衛生保全協会の概要

[本部所在地]東京都千代田区神田神保町
[事務局所在地]神奈川県平塚市田村9-9-16
[代表理事]竹内惠司
[会員数等]25社、エンバーミングセンター総数71か所(21年5月31日現在)
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