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商業施設におけるリニューアルの検討プロセス

執筆|青出木千夏 ニッケ・タウンパートナーズ㈱ 取締役営業本部長

なぜ、リニューアルが必要か?

 リニューアルを行なうきっかけは、収益向上・利用者増加・テナント売上アップなどを目的としたものばかりではない。その背景には、建物・設備の老朽化や耐震性能の陳腐化などによる「物理的劣化」、利用者動線やテナント面積、設備性能などが市場ニーズと乖離することによる「機能的劣化」、さらに人口構造の変化、競合施設の出現、消費行動の多様化など経営環境の変化による「社会的劣化」がある。
 商業施設のリニューアルは、これら3つの劣化を早期に把握し、収益悪化という結果が顕在化する前に、先手を打って対応することが重要となる。売上・客数の低下やそれに伴う客層の変化などが続くと、テナントの撤退などが始まって負のスパイラルに陥ることになる。そういった状態になれば、大規模リニューアルの実施など何らかの思い切った手を打たなければ、そこから脱出するのが難しくなる。

リニューアルの目的と必要性

商業施設におけるバリューアップ経営の重要性

 本来、そういった状態に陥らないためにも計画的なメンテナンスが必要なのである。大きく落ち込んだり、負のスパイラルに入ったりしてから行なうリニューアルは、どうしても大規模なものになるために、大きなコストを払わなければならなくなる。そこで、3~6年に1回程度の間隔で小規模メンテナンスを計画的に行なっておくことが大切になる。
 もちろん、小規模メンテナンス、つまり小規模リニューアルを続けたからといって、大規模なリニューアルを全くしなくてよくなるわけではない。しかし、負のスパイラルに入ってしまってから対応するよりは、総合的にコストを抑えられるだけではなく、収益を一定程度維持することが可能になる。そもそも、リニューアルは収益を上げて不動産価値を損なわないようにするためのものであり、先手を打って計画的に行なうことが望ましい。対処法でなく、予防法である。
 ただ、商業施設の所有形態によってはそういったリニューアルへの理解が得にくいこともある。例えば投資物件としてファンドなどが所有している場合や、商業施設運営が専門でない事業者がオーナーの場合は、リニューアルへの投資に対して改修計画を厳しくその内容を問われることがある。業界に長けていれば、リニューアルが先行投資・長期的回収・不動産価値の維持などといったことを理解しやすい。しかし、そうでなければ短期回収・費用対効果を優先するために、リニューアルへの投資がそれに見合わないという判断を下してしまう。

 リニューアルの投資対効果が効率的でないように思えるのは、直接的な収益向上につながらないからだ。例えば工場など新たなシステムを入れる投資をした場合、それによって生産性が向上するから収益が上昇、あるいは大幅なコストカットが実現する。すなわち、数値的に投資対効果が明らかになるのである。しかし、商業施設運営において劇的な収益向上を果たすためには、賃貸面積を大幅に増やす必要がある。当然のことながら、リニューアルで賃貸面積が大きく増えるなどということはほとんどない。小規模リニューアルなら、なおさらのことである。
 また近年では、特に建築関係は資材費・人件費などが日を追って上昇している状況だ。そのため、小規模なリニューアルであっても十分な投資対効果を得るのが難しくなっている。しかし、前述のようにリニューアルは必ずしも収益向上というだけではなく、収益悪化の防止策といった側面をもつ。
 このあたりの理解をオーナー、投資家から得るためには、事前にリニューアルをしなかったことによる将来的な収益悪化した場合のシミュレーションなども用意しなければならないだろう。すでに収益の悪化が進んでいればわかりやすいのだが、収益が維持されていたりわずかに増加していたりすると、わざわざコストをかけることの正当性を証明する必要が出てくる。

リニューアルの検討プロセス

 商業施設を投資物件とみる場合、オーナーが変わってからNOI(純収益)を改善するために極端なコスト削減を進める例がある。具体的には、清掃費・警備費などを削るといったことだ。結果的に、清潔度が落ちて客離れや治安悪化が進んでしまい、優良テナントが撤退するなど悪循環に陥ってしまう。リニューアルも同じことで、目先の収益やコストにとらわれて必要なメンテナンスを怠ると、施設の価値を低下させることにつながってしまう。これは、地域密着型商業施設ほど顕著に表れる現象といえる。

(つづきは本書で)

商業施設の[リニューアル&バリューアップ] マニュアル

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●A4判/縦型/118頁
●定価104,500円(本体95,000円)
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