第一リアルターに聞く
VIEWPOINT|投資・開発の最前線(試し読み版)
金利上昇と開発コスト上昇による全国的な開発供給の減速がみられるなか、 第一リアルターの市場優位性が際立ってきている。
本稿は、アパートメントホテル開発の最大手である同社に取材。
LOS(平均滞在日数)とGOP(営業総利益)を軸に、需要、運営、投資商品の3面から「強み」の理由をうかがった。
第一リアルターは、東京都心部を中心に収益不動産の開発、投資用不動産のコンサルティングなどを手掛ける企業。同社は2016年からホテル開発に取り組み、東京、大阪、京都を中心にこれまで約100棟のホテルを開発してきた。2018年以降はアパートメントホテル(AH)の開発に集中。同分野のトップデベロッパーとして事業を拡大している。
本格参入の契機となったのは、2018年6月の民泊新法施行である。営業日数規制などにより民泊事業者が大きく減少し、4~6人の家族・グループが同じ空間で滞在できる宿泊需要が行き場を失った。シングル、ダブル、ツイン中心の従来型ホテルでは、家族の団らんや食事、長期滞在時の生活機能を十分に提供しにくい。同社はそこに着目し、キッチン、洗濯機、リビングを備えたAHを企画開発した。訪日旅行者の未充足ニーズを取り込むことで、これまで38棟の開発・売却実績を重ね、現在も約40棟のプロジェクトを抱えている。
同社が開発するAHの宿泊者は、インバウンド比率が約90%を超える。中心となるのは欧米豪を中心とした長期滞在志向の家族・グループ客。初訪日客には安心感を支えるブランド需要があり、リピーターには地方へ回遊する旅行者の拠点としての需要があるという。訪日客数は2025年に初めて4,000万人を突破。政府は2030年までに6,000万人の目標を掲げるなか、需要は追い風と言えるが、代表取締役社長の奈良田隆氏は、訪日客を数でひと括りに捉える見方に慎重である。重要なのは「誰が、どの程度滞在し、どれだけ支出するか」を見極めることだという。
なかでも同氏がAHの運営戦略で重視するのが、LOS(平均滞在日数)である。遠方から来る欧米豪の旅行者は、長時間のフライトを経る分、日本での滞在日数が長くなりやすい。同社の運営実感では、東京で約4泊、大阪で3泊台という水準にある。LOSが長ければ、清掃、リネン交換、アメニティ補充、フロント対応の頻度を抑えられる。つまりAHは、長期滞在需要を取り込むことで売上を伸ばすだけでなく、運営コストを抑えやすい構造を持つ。
良田氏は「ホテルはハードアセットを売るものではなく、事業そのものを売るもの」と語る。そのため評価すべき指標は売上高ではなく、事業収益力を示すGOPである。同社が想定するAHのGOPマージンは66~71%で、一般的なビジネスホテルの48~51%を大きく上回る。稼働率は80%前後が一つの上限となるため、今後はADRを高める力と、コストを抑えながら口コミ評価を維持する運営力が問われる。欧米豪の旅行者は宿泊費への許容度が高く、円安環境では日本の宿泊料金が相対的に割安に映る。
ただし、宿泊者にとって省人化そのものは価値ではない。選ばれるホテルになるには、予約時点で「泊まりたい」と感じさせるビジュアルも必要となる。和モダンの内装、畳や障子、木格子など、日本らしさを感じられるデザインはADRを押し上げる要素となり得る。第一リアルターでは、著名建築家やデザイナーの知見を取り入れながら、滞在体験として訴求できる空間づくりを重視している。
加えて、欧米客に強いOTAへの露出、会員プログラムを持つブランドとの連携、レベニューマネジメント、自社予約比率の向上も重要である。運営コストを抑えながら口コミ評価を維持し、顧客の国籍や予約経路に応じて販売を最適化することが、AHの収益力を左右する。
投資家の関心も急速に高まっている。第一リアルターへの問い合わせは昨年から約2倍に増え、買い手は私募ファンド、私募REIT、年金、金融機関、ファミリーオフィス、海外投資家へと広がる。年間500億円規模で購入可能な投資家が複数、200億円規模の投資家も10社以上いるとされ、契約待ち案件だけで700億円規模に及ぶという。その背景には、AHがノンリコースローンの対象となる「バンカブルアセット」として認知され始めたことがある。二次・三次流通市場も形成されつつあり、投資商品としての流動性は着実に高まっている。また金融機関の融資姿勢の変化によりLTV(借入比率)が上昇し、投資家のROE(自己資本利益率)は改善傾向にある。結果として物件の取得競争力が高まり、高値取引を支える要因となっている。また、成田空港の第三滑走路が2029年3月までの供用開始を目標として整備が進められていることや、羽田空港でも第五滑走路の増設検討が始まったことも、海外からの旅客受入能力の拡大という点において重要なファクターである。
一方、ファイナンス、用地確保、開発コスト上昇は重い課題である。建築費・人件費の高止まりにより新規供給は絞られ、全国的なホテル供給量は年間25~35棟程度にとどまる見通しだ。単に土地を取得し、建物をつくるだけでは競争力は確保できない。オペレーターを育て、金融機関や投資家に説明できる運営実績を積み上げることが参入障壁となる。
今後有望な投資開発機会として同社が重視するのは、都市型の中規模AHである。1棟当たり50億~60億円、50室前後の規模を中心に、年間25棟程度の開発を継続する方針だ。この規模はGOPマージンを高めやすく、機関投資家が取得しやすい価格帯でもある。また、大口機関投資家向けに1棟当たり100億円超、100室前後のホテルも年間3~4棟供給する計画だ。エリアは東京を軸に、大阪、京都、福岡へ展開する。東京では上野、浅草などの城東エリアに加え、渋谷、新宿、銀座といったプライム立地にも改めて注目するとしている。
インバウンド需要の拡大と供給制約が同時に進行するなか、同社はLOSとGOPを軸とした事業モデルを武器に、AH市場の拡大を取り込む考えだ。
