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篠田香子 [ジャーナリスト]

ホテル投資の世界トレンドと
日本市場の位置づけ

VIEWPOINT|投資・開発の最前線(試し読み版)

仏・カンヌで毎年3月に開催される世界最大の不動産投資カンファレンスMIPIMでは、例年「HTL Connection」と呼ばれるホテル・ツーリズム専用ゾーンが設けられ、今年もホテルグループ、投資家、デベロッパー、公共機関の意思決定者など200名超が集結。
ホテル市場調査グローバル大手のSTRがカンファレンスプログラムを主催、「ブランド」、「ラグジュアリー」、「ウェルネス」、「コンバージョン」、「AI」が主要テーマに取り上げられた。

世界のホテル投資市場は
過去最高水準に

HTLコネクション内の「ホテル&ツーリズムステージ」では、STRのサマンサ・マードカー氏が、ホテル投資市場の1年間の振り返りと2026年以降の予測をプレゼン。世界のホテル客室需要は過去最高水準にあると報告した。2019年の需要を100とすれば、2023年104.3、2024年106.8、2025年108.0まで拡大、「コロナ前を明確に上回る水準に達している」とした[図表1]。

 

 

地域別では、APACと中東・アフリカが需要回復・成長を主導。その一方で、世界のホテル供給増加率は2023年以降低下傾向にあり、2026年1月時点では前年比1.2%増にとどまる[図表2]。

 

 

需要が伸びる一方で供給が抑えられていることが、稼働率とADR双方の上昇余地を支えているということだ。

稼働率は地域によって差があるが、中東79%、アジア(中国本土除く)72%、豪州・オセアニア74%などが高水準。ADRも中東220ドル、豪州・オセアニア192ドル、南部アフリカ188ドル、欧州160ドル、北米156ドルなどとなっており、多くの地域で価格上昇が続いている。2025年の客室需要の前年比伸び率ではアフリカ、GCC(中東)諸国、日本、インド、豪州、ラテンアメリカなどが上位に位置している。

日本市場の位置づけ
ADRに成長余地

世界の中で日本のホテル市場はどうか。インバウンドの回復、国内需要、インフレ経済を背景に、グローバルでも好調市場の一角であり、アフリカ、GCC諸国、インド、豪州などと並び、2025年に客室需要を大きく伸ばした国・地域の一つとなっている。しかし、稼働率とADRの側面から日本市場の位置づけをみると、日本は伸びが鈍化している[図表3]。

 

 

稼働率比較では、現在の日本の稼働率は78%で、シンガポール79%に次ぐ高水準。タイ76%、豪州74%、韓国69%、インド65%、フィリピン64%などと比べ高い稼働水準にあるが、日本とタイでは前年からの伸びが緩和傾向にある。これは“悪化”というよりも、すでに稼働率が高く“ これ以上大きく伸ばしにくい状態” ということだ。ホテル市場では、稼働率が80%近くまで来ると、追加的な成長余地は限られるためである。
一方でADRの側面では、日本はAPACの成熟市場の中位にある。日本は138ドル。シンガポール248ドル、豪州192ドル、タイ169ドル、ニュージーランド158ドル、韓国149ドルに次ぐ水準で、ベトナム128ドル、カンボジア128ドル、フィリピン110ドル、インド109ドル、中国59ドルを上回る。APACのADR成長率において、日本は2026年1月時点で前年比7.0%増と、カンボジア14.3%、ベトナム10.9%、インドネシア9.1%、インド7.3%に次ぐ水準であり、豪州6.3%、フィリピン5.9%を上回る[図表4]。

 

 

したがって日本のホテル市場は、稼働率は上限に近いレベルで高いものの、単価にはまだ上昇余地が残る[図表5]。

 

 

つまり、今後の収益成長は稼働率向上よりも、ADRの向上、運営効率のアップ、ブランド化、既存ホテルのリポジショニングが投資テーマとなることを示唆している。

ホテル投資のモメンタム
ラグジュアリーとブランドへ

HTL Connectionでは、ホテルに関する多様な側面からの投資アプローチが議論され、なかでも「ブランド」、「ラグジュアリー」、「ウェルネス」、「コンバージョン」、「AI」といった言葉が頻繁に聞かれた。

オフィスや商業ビルをホテルに転換するコンバージョンは、開発コストの上昇で新規開発が抑制されるなか熱い議論を呼び、経営効率化ツールやAI活用策は、深刻な人材不足を背景にプレゼンが盛り上がっていたが、とりわけ最も話題に上っていたのは「ブランド・アセット」だった。

 


≪記事の全文は本誌で≫

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