齊藤晃一氏[ リーシング・マネジメント・コンサルティング]に聞く
OVERVIEW|差別化戦略の「原点」(試し読み版)
賃貸住宅のバリューアップ戦略に向け、より付加価値の高いプロダクト案、インパクトの強い差別化手法を打ち出すためには入居者需要を精緻に掴む「マーケティング戦略」が不可欠となる。
本稿は住居系不動産ファンドやJ-REITの戦略アドバイザーである齊藤晃一氏に、入居者ニーズの潮流と投資運用に求められる視点をうかがった。
インフレ・金利上昇局面においても、賃貸マンション市場は好調を維持しているといわれる。国内外含め投資家の投資意欲は根強い。当社が仲介会社などに対し定期的に実施している調査・アンケートなどを基に、市場を支える入居者ニーズについて考えてみたい。
賃貸マンションを探す際の予算は、名目賃金の伸びなどを背景に、単身・DINKS世帯の場合で前年比1万円程度、ファミリーで1~2万円程度上昇した。

間取りでは、単身向け住戸(20~35㎡)のニーズが堅調である。建築費の高騰で供給が細っているほか、自治体のワンルーム規制条例で一部をファミリータイプにしなければならないこともネックとなっている。
一方DINKS向け(40~45㎡の1LDK~2LDK)あるいはDEN(書斎や趣味の小部屋、隠れ家的な多目的スペース)を設けた間取りは需要低下がみられる。この要因にはパンデミック収束でリモートワークの機会が低下していることが挙げられる。あるいは、間仕切りよりも解放感のある空間、よりグロス賃料が安い、多少割高でも防音ないしは防音性能が高いところなどニーズが多様化・細分化している影響が考えられる。
なお、オーナー側にも見逃せない変化がある。それが定期借家契約を志向する流れである。インフレ傾向が定着するなか、2年程度の定期で賃貸借契約を切ることによって入居者の入れ替えを進め、賃料アップサイドの恩恵を享受しやすくする狙いがある。
ただしエンドテナント側については定期借家契約への抵抗感がいまだ強いようである。定期借家契約への考えを聞いたところ、個人では「やや抵抗を感じる」が40.1%で最多、法人では「強く抵抗を感じる」が44.1%と最大となった。

賃貸マーケットの状況からも入居者ニーズを振り返ってみたい。都心5区の人口と坪単価、および募集戸数(築10年以内、新築募集戸数を含む)の推移をみると、人口は直近1年(2025年1月~2026年1月)で0.7%の増加。募集戸数は2025年1月比で13.8%の増加、募集坪単価は2万2,134円で、2020年3月比で21.7%の上昇となっている。
一見マーケットは好調にみえるものの、同時にエンドニーズには息切れ傾向も垣間見える。都心3区(千代田・中央・港)に絞ってみてみると、流入人口の勢いが弱まっており、とくに千代田・港では月ベースで若干のマイナスになるケースが散見される。賃料上昇にマス層の負担力がついていかず、その需要は他の区や、横浜・千葉・大宮などの周辺エリアに染み出していると考えられる。
もっとも分譲マンションの価格上昇に比べて、賃貸は価格改定が遅れている。よってマーケット全体として目先数年は賃上げ傾向が続くとみて間違いないだろう。
≪記事の全文は本誌で≫
齊藤晃一氏
リーシング・マネジメント・コンサルティング 代表取締役社長
1976 年生まれ。コンサルティングファームにてダイレクトマーケティング事業の新規参入戦略立案・実行支援のコンサルティングを多数経験。その後、IT マーケティング企業にて新規事業企画室長として新規事業の立ち上げ、M&A等を経験し、リーシング・マネジメント・コンサルティングに参加。
代表取締役社長として大手不動産ファンドやJ-REIT ポートフォリオの集客プロモーション(リーシング)戦略策定に携わる。「賃貸マーケティングの確立」をテーマに講演、企業研修、執筆など多数。