土田育新氏 [ブルックフィールド・アセット・マネジメント]に聞く【抜粋版】
INTERVIEW|グローバルファンドの戦略
ブルックフィールド・アセット・マネジメントは、不動産をはじめ再エネ、インフラ、PE、クレジットの分野でグローバル1兆ドル超のAUMを有する。日本では2024年に「目黒雅叙園」と物流施設用地を16億ドル(約2,400億円)で取得。直近では東京・汐留の「電通本社ビル」を取得することを明らかにしている。日本での事業拡大余地、投資における狙い目やポリシーについて、対日不動産投資を統括する土田育新氏に話を聞いた。
インタビューに答えるマネージングディレクター|インベストメンツ 不動産の土田育新氏
――貴社における日本市場の立ち位置について教えてください。
土田 当社はアジア太平洋および中東で積極的に投資を拡大させる意向で、今後5年間で両地域における不動産のAUMを現在の400億ドルから3倍に拡大する方針を立てています。日本はこの戦略のなかで最重要拠点に位置づけられます。投資家と日々コミュニケーションを取るなかで、日本市場に関する問い合わせは明らかに増えており、それだけ投資家の期待値は高いのだろうと思います。日本の不動産に対しては、数十億ドル(エクイティベース)を投じたいと考えています。
――日本市場の魅力はどこにあると考えていますか。
土田 大きく3つあります。1つ目は高い安定性です。地政学、法制度、流動性などさまざまな面で見ても、アジア太平洋地域はおろかグローバルのなかで安定感が際立っています。
2つ目は、経済のインフレシフトです。これは市場が安定性に加えて成長性を見込めるようになったことを意味します。日本は長らくデフレが続いてきたわけですが、見方によってはその間成長していたはずだった分を取り戻すという言い方もあるかもしれません。
3つ目は、コーポレートガバナンスの構造的な変化・改善です。企業は投資家の声に耳を傾けながら、事業や資産の最適なポートフォリオを再構築しはじめています。不動産の保有に関するあり方も見直しの動きが広まっており、企業価値だけでなく不動産価値に着目した提案が求められるようになるでしょう。そのような形でのソーシング機会を当社は積極的に開拓していきたいと考えています。
――注目しているアセットタイプやエリアは何ですか。
土田 オフィス、物流、ホテルの3つをコアセクターに位置付けています。いずれもインフレと歩調を合わせた収益増加を見込みやすいアセットタイプと捉えています。
オフィスは企業の出社文化や人材採用強化を背景に、床需要が高止まりしている状況。物流施設は自前の古い倉庫から賃貸の先進的施設への移転ニーズが引き続き活発で、冷凍冷蔵倉庫の市場拡大にも期待しています。ホテルはインバウンド需要の伸びと政府の観光政策強化方針が好材料です。
加えて、1件あたりの金額規模を理由に日本では投資してこなかった、住宅の魅力が高まってきたと感じています。これもインフレへのキャッチアップのしやすさが要因です。
そのほか、グローバルで投資実績を積み重ねているデータセンターにも関心はあります。ただし日本は建築コストの高騰が著しく、開発後のテナント需要について未知数なところもあるため、タイミングを慎重に見極めなければいけないと思います。
エリアについては、東京圏でなくてもテナント需要を見込めるケースがあると思いますから、地方での投資も検討可能です。現に当社は、名古屋近郊の岐阜県安八町で物流施設の開発用地(敷地面積約9万3,000㎡)を取得しました。
≪取得後の運用方針、AM会社やPM会社との向き合い方は本誌で≫
マネージングディレクターとして日本の不動産事業を統括。日本における不動産投資ビジネスを拡大すべく、投資対象として不動産、不動産関連企業、並びにその他潜在パートナーとの資本提携等含め、新規案件のソーシング、評価、投資実行業務等を担当。以前は、アンジェロ・ゴードンにて国内外の不動産投資業務に従事。それ以前は中央三井アセット信託銀行にて伝統資産の運用業務に従事。早稲田大学先進理工学研究科ナノ理工学専攻修了。工学修士