リストデベロップメント
【試し読み】
リストグループのリストデベロップメント(LD)が、ホテルコンドミニアムやブランデッドレジデンスの開発・販売に力を入れている。「高級不動産市場が一気に拡大する」(投資・開発事業本部3部 部長の渡部恭士氏)とみるためで、2025年は軽井沢エリアで2件のプロジェクトを発表、今後ニセコでも計画を予定している。
事業積極化の理由は、高級不動産の需要拡大と供給不足を感じているためだ。まず需要面では、ライセンス契約を結ぶ大手不動産仲介ブランド「サザビーズ インターナショナル リアルティ®」(SIR)の顧客ネットワークから手応えを得ている。LDはSIRの日本国内独占営業権を取得しており、その販売網を活かしてグループのリスト サザビーズ インターナショナル リアルティでは国内外で1,000億円以上の不動産を取り扱う実績を持つ。
「アジアの富裕層の数は年々増加しており、例えば45億円以上の資産を保有するウルトララグジュアリー層は2030年までに倍増するといわれる。とくに近年は日本のリゾート地が海外富裕層のデスティネーションとして注目され、投資ニーズが強まっている」(渡部氏)。
一方で供給面については、「商品品質の担保や建築費の高騰、販売チャネルの限定性などから参入障壁が高く、一部リゾート地を除けば供給はほとんど進んでいない」と指摘。LDではグループ会社がもつ高級レジデンスの仲介実績をもとに、運営会社やブランドで差別化しやすいホテルコンドミニアムやブランデッドレジデンスの開発に注力していく。
LDの開発事例をいくつかみてみよう。いずれも国内外の富裕層を販売対象とした高級不動産で、投資・実需の両面を意識した商品企画を意識している。
「ラ ヴィーニュ 白馬 by 温故知新」(長野県白馬村)は同社初のホテルコンドミニアム開発計画で、地上5階建ての建物に、3ベッドルーム(約53~約144㎡)の38室で構成される。運営は温故知新が手がける。
物件が立地する白馬エリアは国内有数のスノーリゾート地ながら数十年にわたって新築ホテルの供給が少なく、主要リゾート地よりもエリア内での優位性を発揮できることから開発に踏み切った。実際、販売価格8,000万円~2億7,000万円という割安感もあいまって、竣工後約半年で全戸を完売。国内/海外投資家の比率はおおむね8対2で、海外投資家の顔ぶれは香港、台湾、シンガポールといったアジア圏が中心である。

なお開業後の運営・集客もインバウンド客を中心に好調で、白馬エリアのホテルではスノーシーズン中に最も高いADRを達成したという。
白馬で得たノウハウを基に、長野県軽井沢町でも第2弾となるホテルコンドミニアムの開発を進める。建物は地上2階建てで、客室は17室。間取りは全室にプライベート温泉を備えたスタジオ~2ベッドルームを用意している。こちらもオペレーターは温故知新が担い、2026年春ごろの販売開始を予定する(開業時期は未定)。

同じ軽井沢では、ラグジュアリーホテル「Anantara Karuizawa Retreat(アナンタラ軽井沢リトリート)」の開発も進行中だ。運営はタイ発祥のラグジュアリーホテルブランド「Anantara」で、日本初進出となる。
客室はスイートルームとヴィラを含む51室で、2030年の開業を予定する。このほかニセコ町ではひらふ坂の入口に位置する用地(約6万5,000㎡)でヴィラの開発を予定している。「ニセコでは白馬よりも海外の投資家がメイン購入層になる見込み」(渡部氏)。
ハードの特徴だけでなく、ソフトサービスの拡充も必要だ。LDの開発物件では、地産地消食材を使用した食事や多彩なウェルネス施設によるリトリートサービスなどを提供している。
「これらサービスは、いずれも富裕層の間でトレンドになっている健康志向を取り入れたもの。仲介事業で富裕層の動向、ニーズを最前線で把握できる当社ならではの企画が強み」(渡部氏)。
LDは今後、年間1~2棟のペースでホテルコンドミニアムやブランデッドレジデンスの開発に取り組む方針。運営はアナンタラのような海外で評価の高い日本初進出ブランドなど、顧客の満足度や付加価値の高いブランドと協業したいとしている。
エリアについてはニセコや白馬、軽井沢のほか、国内でインバウンド需要が見込める京都、大阪、沖縄、伊豆、箱根などで積極的に取り組む意欲。また開発に際しては、その物件・ブランドが提供する“非日常性”を最重要視する。
「今日の高級マンションは、正直質感が画一的で違いが分かりにくくなっている。富裕層が求めるものは、その物件ならではの唯一無二性だ。室内に入った瞬間にブランドの世界観を強く意識させる内装を作り込むほか、あえて不便な立地で物件の特別感を演出するなど、顧客の求める独自性を満たす工夫が必要」と、渡部氏は話している。