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テレビ朝日

メディア企業発
本業直結のリアル拠点

【試し読み】

 東京・有明南地区でテレビ朝日が開発を進める「TOKYO DREAM PARK(東京ドリームパーク、以下、TDP)」は、多目的ホール、イベントスペース、劇場、展示フロア、屋上広場、レストラン、スタジオ機能などを備える大規模複合エンターテインメント施設。ゆりかもめ「東京ビッグサイト」駅から徒歩約5分の立地で、2026年3月の開業を予定している。

IP・コンテンツの価値
リアル空間へ還流

「TOKYO DREAM PARK」
「TOKYO DREAM PARK」

 プロジェクトはテレビ朝日の経営戦略の一環。同社は2022年度に発表した経営計画2023-2025において「コンテンツ360°戦略」を掲げており、自社制作コンテンツ・IP の価値を地上波放送のみならずイベントやネット配信、物販など、あらゆる方面で展開する経営モデルを推進している。
 
そのなかでTDPは、自社のメディア資産をリアル空間で事業展開する「メディアシティ戦略」の中核に位置付けられ、放送(地上波、BS朝日、ABEMAなど)を介して提供してきた映像コンテンツ(ドラえもん、クレヨンしんちゃん、戦隊ヒーロー、仮面ライダーシリーズなど)をリアルなエンターテインメント空間に還流、その価値を増幅する役割を担っている。
 
「当社はIP・コンテンツを創る会社であり、その可能性を最も大切にしたいと思っている。TDPはアニメや音楽、ドラマやバラエティ番組といったIP・コンテンツの“ 熱量” をリアルな場でお客様に楽しんでいただく、新しいビジネスプラットフォームを形にしたもの」(ビジネスソリューション本部 イベント事業局次長 兼 TDP事業センター長 榊原誠志氏)。
 
 TDPはメディア企業のCRE(企業不動産)戦略における新しい潮流となるプロジェクトともいえる。これまでテレビや新聞などメディア企業による不動産事業は、オフィスやホテルなど収益資産を開発、本業と切り離した収益資産を確保するケースが大半であるが、TDPは本業ビジネスの延長線上にあるという点で一線を画している。

コンテンツこそ
最大の不動産価値

 TDPの施設構成は、コンテンツ発信と体験を全面に打ち出したもの。音楽特化型ホール「SGホール有明」(約3,700席・スタンディング約5,000人)、ミュージカル公演などを想定した劇場「EXシアター有明」(約1,500席)をはじめ、上層階には「ドラえもん」など自社アニメIP を活用した展覧会や、フランスから初上陸する没入型デジタルアート「レーヴ・デ・リュミエール」の展示フロアを配置している。屋上のドリームテラスや飲食ゾーンを合わせ、来館者を立体的に回遊させていく計画である。

「TOKYO DREAM PARK」フロアマップ

フロアマップ。延床面積:約4万6,500㎡

 来館者ターゲットは、家族連れからアクティブシニア、インバウンドまで広範囲に設定。近年のコンテンツを核にする開発事業では高い収益性を確保するため富裕層を狙う施設が多くみられるが、TDPでは「より幅広い層に支持される親しみやすいコンテンツのなかでどうマネタイズできるか施策を検討していく」(榊原氏)ことを基本スタンスに置いている。
 施設運営面では、テレビ朝日が六本木ヒルズで毎年夏、11年間にわたり10回開催してきたイベント「SUMMER STATION」の実績と、多目的エンターテインメント空間「EXシアター」を通じ蓄積してきた劇場運営のノウハウを継承、365日稼働型の運営体制を敷いている。事業収益モデルでは興行収益やホール・劇場の貸館収入、チケッティング、飲食・物販など施設単体での収益にとどまらず、地上波番組と連動した販売やスポンサーシップを組み合わせトータルで採算を取る方針である。
「地上波からネット配信やSNSでの拡散を通じ価値を高めていき、リアルイベントで刈り取っていく。ライフサイクル全体でコンテンツの収益最大化を図る新しいビジネスモデルにチャレンジしたい」(榊原氏)。

SGCホール有明イメージ

SGCホール有明イメージ

SGCホール有明イメージ。ドームやアリーナで活躍するアーティストがライヴを開く予定

 国内での不動産開発における建物の機能・スペック競争が限界を迎えつつあるなか、TDPは「コンテンツこそ最大の不動産価値」という新しいパラダイムを体現したプロジェクトであり、本業と直結したCRE戦略としても今後の動向が注目される。

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