高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第38回
Rinn Gion Hanatouro(鈴 祇園花とうろ)
(京都市東山区)

一見クローズドな雰囲気にして
エリアを味方につける京ならではのアプローチ


 本連載では、レジャーホテルの要素ある、あるいはレジャーホテル運営に参考になるだろう一般ホテルについて考察を深めてきた。これもコロナ禍前のインバウンド活況から続く一般ホテルとのボーダレス機運、レジャーホテルへの宿泊業としての社会的な認知等新たなフェーズへの示唆として役割を認識してのものである。

 最初から一般ホテルが前提で、調度品、運営システム、サービス アメニティ等々レジャーホテルの秀逸なポイントを取り入れたと思われる一般ホテル、他方、立地やハードなどまさにレジャーホテルを彷彿とさせるが、一般ホテルへ舵を切ったと思われるケース(新法ホテルを除く)など、いずれにしてもレジャーホテルの発想を活かしたホテルがホテルビジネスとして秀逸な成果を収めているのを取材を通して目の当たりにしてきた。

 今回は前者のタイプとなる京都のスモールホテルだ。20173月にオープンした「Rinn Gion Hanatouro(鈴 祇園花とうろ)」は、祇園エリアの南側に位置、観光スポットとしても知られる芸者地区の花見麹町まで徒歩1分、祇園甲部歌舞練場や神宮寺まで徒歩2分、八坂神社まで徒歩4分というまさに京の雅の中心といってもいい場所。客室はモダンにして和のエッセンスがちりばめられている。一部の客室には東山地区の寺院の美しい景色を望むバルコニーが付いている。そんな抜群のロケーションだけ、まさに京の文化・歴史の中心でステイする趣を堪能できる。

 一方でそんな立地ゆえか小規模なホテルにして一見クローズドな雰囲気も醸し出している。景観に関する条例ならではというかダークトーンの外観もそんなイメージにさせているだろうか。小規模と先述したが、4階建てにして計10室というまさにスモールホテルだ。2名利用を中心として4名まで幅広く対応しているが、とにかくカップルユースの引き合いが強く、事実カップルユースのクチコミスコアも相当高い。

 モダンな客室はどこまでも清潔感に溢れている。バスルームには全室に日本の伝統美ともいえるだろう檜の浴槽を完備。手入れが行き届いており一見して清潔感に溢れ思わず笑みがこぼれる。クローズドな雰囲気だからこそ清潔感、新しさは重視するポイントというが、この発想に至らないレジャーホテルは多いと感じる。各種アメニティ類はもとより、客室にはネスプレッソのコーヒーマシンが常備されているのにもかかわらず、ロビーにはハイエンドなネスプレッソマシンが置かれていた。

 そんなスモールかつクローズドな雰囲気のホテルにして、エリアあってのコンセプト醸成という点にも注目したい。花見小路や巽橋など、テレビドラマでよくみかける京都が目の前、京都五花街の祗園甲部、宮川町、祇園東の中心で散策すると舞妓さんに出会うこともでき、昼と夜では全く情景も異なるので散歩も楽しい。コンセプトを打ち出すホテルは一般/レジャー問わず数多いが、こうしたホテルを見るにコンセプトはエリア、土地と共に醸成されていくものだとも考える。

 レジャーホテルの要素溢れる一般ホテルとこの連載でも枕詞のように書き連ねてきたが、ホテルをカテゴライズすることの必要性を前提としつつ、カテゴライズすることの無粋さというアンチテーゼを併せ持たせることは、新時代のレジャーホテルジャーナルとしてひとつのスタイルとして確立しつつあることを、こんなスモールホテルは教えてくれた。

Rinn Gion Hanatouro(鈴 祇園花とうろ)
京都府京都市東山区小松町555
075-525-8100

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

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