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【2004.12.03】

金沢の街に舞い降りた「宇宙船」

 10月9日、「金沢21世紀美術館」がオープンしました。

「まるで宇宙船のようでしょう」と同館の蓑館長が形容するように、兼六園や金沢城という歴史的観光名所のすぐ近くにありながら、というよりも、であるがゆえにその姿は一際モダンな建築物として異彩を放っているように映ります。「こんな建物見たことない」というのが第一印象で、「宇宙船」という表現は、確かにぴったりのような気がします。

 公園のようにつくり込まれた敷地の中央に配置された建物は円形の1層構造で、全面ガラス張り。外から中の様子が見えるのはもちろん、中からも周りの街並みが見渡せる、こんな空間に身を置きながら、作品を見たり、外の風景を眺めたりしていると、実に気持ちの良い、空間の居心地のよさがあって、なにやら楽しい感じさえしてきます。現代美術というと敬遠したくなる人が多いでしょうが、いままでの堅苦しいイメージはここにはありません。見るだけでなく触れたり遊んだりできる作品も置かれ、難しいことはわからなくても、美しいと素直に思える作品と出会え、ちょっと癒された気分も味わえました。

 その周りには市民ギャラリーやシアター、工房なども配されていて、市民ギャラリーでは美術に限らない展覧会を市民の手で開くことができるなど、誰もが気軽に立ち寄れる「街に開かれた公園のような美術館」が目指されているのです。

「美術館は街であり、街は美術館である」という建築コンセプトが気に入って、以前からどのような美術館になるのだろうかと期待していましたが、そのコンセプトは建築だけのものではなく、美術館のあり方そのものにも通じるものであり、金沢という伝統的な街にあってまるで“異物”のようでありながら、うまく街と一体化している、ちょっと不思議な存在です。

 入口が4か所もあり、一切段差のないバリアフリーな形態もあってか、いろいろな人たちが、公園に遊びに来ているように散策する姿があり、街中を通り抜けるように館内(無料ゾーンだけでも結構なスペースがあり、美術館の雰囲気に浸るには十分です)を見て回る人あり、ちょっとベンチでくつろいで作品を眺めている人ありと、いままでの美術館ではお目にかかったことのない光景が、ここでは普通に見られます。

 開館前から、街へ出て行ってさまざまなイベントを繰り広げることで、新しい美術館の認知やファンづくりに大いに役立っていたことも、金沢の人たちにとって親しみを感じさせる要因であったのかもしれません。開館半年くらい前に伺っていろいろとお話を聞かせていただいたときも、とにかく街へ出て行くということを徹底してやっているという活動の多彩さとエネルギーに驚かされたことが印象に残っています。

 また同館では特に、子供の頃に美術へ行ったことのある人は、大人になっても必ず美術館に戻ってくるという考え方のもとに、子供を大切にしていて、開館直後から金沢の小中学校の児童・生徒約4万1,000人をすべて、送迎・ガイド付きで館に招待するという、思い切った企画も実行しています。

 言うは易く、されど実行は難しというそんなエネルギッシュな活動もやり続ける同館からは、いままでの美術館とは明らかに一味違った楽しいオーラのようなものを感じるのです。数がすべてではありませんが、開館1か月余にして20万人という集客力はただならぬものを予感させます。それもそのオーラのなせる業なのかどうか、それだけの人が動けば街も自然と活性化するはずで、「美術館は街であり、街は美術館である」という真意もそこにあるものと思われます。いずれにしても伝統の息づく街に新しい刺激をもたらす魅力的な「宇宙船」ではあることは確かです。

「エンターテインメントビジネス」(12月末発刊、第7号)で施設の紹介と蓑館長のインタビューを掲載いたします。

【参考URL】
金沢21世紀美術館
http://www.kanazawa21.jp/
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