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【2004.10.08】

「温泉」をめぐる一連の騒動に思うこと

「日本人は温泉好き」という言葉を証明するように、全国各地で温浴施設づくりが盛んに行なわれています。各市町村での自治体による温浴施設整備はもとより、都市型のスーパー銭湯や日帰り温泉といわれる業態、最近ではリラクセーションを前面に打ち出した新しいタイプの施設や足湯、そして温泉ではありませんが岩盤浴といったものも急速に普及しつつあり、さらには温泉地の旅館・ホテルがこぞって露天風呂や個室風呂を“必需品”として備えるようになっています。

 弊社では、1990年に温浴施設やプール施設などを専門に取り扱う情報誌「アクアウエルネス」を創刊しましたが、私の記憶では、竹下総理時代の「ふるさと創生」政策の頃から、温泉を掘削して温浴施設をつくるという動きが自治体で活発化しはじめたと思います。いずれ、こうした動きも沈静化するのでは考えていましたが、予想は見事に外れ、開設ラッシュはいまも続いているわけです。

 それにしても、これだけ各地で温泉を掘り続けていると、将来はどうなるのだろうかとちょっと心配もしていたのですが、そうした折に、ブームに冷水を浴びせるように、例の“ニセ温泉”問題が突発しました。入浴剤の使用、温泉でないものを温泉と偽る不当表示が次々と発覚し、物議を醸しているのは周知のところです。それはそれで大いに問題化させてはっきりと解決の道を示してほしいものですし、そうした行為を弁護するつもりもありません。

 しかしながら、冷静になって考えれば、限りある天然資源を大量に消費し続ければ、やがて今回のような欺瞞が生じることは、残念ですが当然の帰結のようにも思われるのです。もともと観光資源といわれるものの多くは人間がつくったものではなく、天の恵みです。その恵みを享受させてもらっている以上、相応の「礼節」をもって対するのが、自然界の一員としての人間の道というものではないでしょうか(というのは古臭い言い方かもしれませんが・・・)。

 もうひとつ気になっているのは、温泉問題騒ぎに隠れたようになってしまっている、レジオネラ属菌の感染症問題です。何人もの死者まで出したこの問題については、アクアウエルネスでも何度か取り上げてきましたが、解決をみていないどころか、まだまだ問題、課題が山積しているようです。発症報告も増加しているといいます(これは、レジオネラ属菌による感染症が医師の間でもしっかりと認識されるようになったことも大きいのでしょう)。厚生労働省も感染症防止のための告示を出すなど対策に努めていますが、各自治体での条例や保健所の指導など、実際の対応の仕方には随分と違いがあり、なかには適切ではない対応も見受けられると専門家は指摘しています。

 何よりもバックヤードである設備に対する認識が総じて低いということが原因として挙げられます。できるだけコストや手間を抑えたいというのは、事業者としては自然な考え方といえますが、コスト意識だけでなく、清潔で安全な環境を提供するという意識もまた強くもつべき責務があります。

 身近に温泉に親しめる機会が増えるのは大いに歓迎すべきところですが、それゆえに"守るべきこと"が、事業者だけでなく消費者も含めてすべての人たちにあるのではないかと、最近は思っている次第です。

(大谷祐司/アクアウエルネス

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