株式会社トータルプランニング

[運営・コンサルティング]

MYTH グループ長期保有に向けた
ハード×ソフト×オペレーションの革新と人材育成

 

代表取締役 脇田 克廣 

MYTHブランドで全国に50店舗を展開し、年間利用者200万人、雇用スタッフ1,200人を擁するHOTEL MYTH GROUPを統括管理する㈱トータルプランニング。2年にわたるコロナ禍で11店舗をM&Aし、リニューアル投資で再生を果たした。2021年12月期の全店舗売上げは、対前年比108%と成長し続ける。宿泊産業が軒並み低迷するなか、いかにして成長し続けるレジャーホテルの人と組織をつくりあげたのか。トータルプランニング代表取締役会長の脇田克廣氏に話を伺った。
 

企業名

株式会社トータルプランニング

TEL

06-6776-0500

所在地

大阪市天王寺区生玉前町1-13

URL

http://www.total-p.co.jp 


海・空・風を感じる全室オーシャンビュー(25室)の
「HOTEL MYTH L&A」(山口県下関市)


 

 

コロナ禍の2年で11店舗を再生
人材の確保と育成が最大の課題
 
――コロナ禍にあって、MYTHグループのホテルは堅調を維持しています。
 
脇田 シティホテルやビジネスホテル、旅館といった他の宿泊業態とは異なり、日常使いの利用が中心となるレジャーホテルではリピーターの確保が重要となります。弊社グループホテルの場合は、リピート率が75%、独自会員システムのメンバー利用率が65%に達しています。長年のリピート客でも生活環境の変化などで離れていくこともありますが、新規顧客を獲得してうまく循環できています。
 
――2021年4月から22年3月までに5 店舗を取得、リニューアルオープンさせ、MYTHグループは、50店舗に達しました。
 
脇田 レジャーホテル事業に参入したときには、ここまで大きな組織に育てる意識はありませんでした。レジャーホテル事業の適正な経営形態は、3~5店舗が理想と考えていました。その事業規模であれば、家内制手工業のように“身内”の労働力だけでなんとかまかなえるからです。店舗数が増えると、どうしても外部からの労働力に頼らざるを得ません。
  昨今では、働き方改革に伴う人件費の高騰で労働力の確保は非常に難しくなっています。多くの事業者は、ホテルのサービス向上やリニューアルの施策よりも、まず人材確保に取り組まなくてはなりません。募集をしても人が集まらず人材確保に振り回されているのが現実です。
  働き方改革が推進されるなかで従業員の雇用形態も変化しており、24時間365日営業のレジャーホテルは今後さらに難しい局面を迎えるかもしれません。その点を踏まえたうえで、将来的な事業戦略を構築しなければなりません。
 

リネンモニターを有効活用し
自律的なスタッフを組織化
 
――顧客創造するためには「ハード」×「ソフト」×「オペレーション」を革新しなければならないが持論ですが。
 
脇田 過去レジャーホテル事業の収益性の高さに着目して異業種から参入してきた新規事業者や投資家の多くは、「ハード」と「ソフト」に大きな投資をしました。大規模リニューアルしハードを新しくすれば、短期的には売上げが上がります。しかしその効果はせいぜい23年しか持ちません。2~3年後にはじめて、いかにオペレーションが重要かということに気づきます。中長期的視点でみれば、「ハード」×「ソフト」 ×「オペレーション」のそれぞれに適正なコストを投資をする必要があります。
  とくにオペレーションに対する投資コストは、「ホテルDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化・省人化・マーケティング」、「労働環境の整備・改善」、「人材育成」などです。
  「ホテルDXによる効率化・省人化」は、2020年12月にリニューアルオープンした「MYTH -abc-」(長野・塩尻3館体制・76室)では、館内約200か所に監視カメラを設置しました。バックヤードの各所にフロントコンピュータと連動したリネンモニターと監視カメラを設置し、ホテル内のお客さまとスタッフの動きをリアルタイムで情報を共有できるようにしました。それ以前は、スタッフ間での情報交換や指示は口頭で行なっており、言い間違いや聞き間違いが発生し、お客さまからのクレームやスタッフ同士の感情的なトラブルも発生していました。
  リネンモニター設置後は、バックヤードのどこにいてもモニターが目に入るので、スタッフは常にモニター映像を意識するようになります。モニター映像は、人が口頭で伝えるよりも情報量が多く、正確に伝わります。その結果、スタッフがリネンモニターの情報を読み取り、自律的に動くスキルが養われることになりました。
  また、監視カメラはスタッフ同士の相互監視システムとしても機能しており、支配人や本部の目が直接届かなくても、すべてのスタッフが緊張感を持って業務にあたる職場環境をつくりあげています。
  もちろん、これらのシステムは単に導入しただけでは効果はあがりません。システムを運用するルールづくりも重要となります。そのためには、経営者がどのようなオペレーション体制を構築したいのかを明確にし、それを実現するシステムを導入することが求められます。

全体の動きを情報共有するモニター

コロナ禍前に定例開催されていた月例全国支配人会議


 

ONLINEを活用した朝礼で各店舗の情報を共有する

 
労働環境整備と人材育成システムで
オペレーションに必要な人材を確保
 
――「MYTH 諏訪」など直近の大規模リニューアルでは、スタッフが働くバックヤードにも大きな投資をしています。
 
脇田 それがまさに「労働環境の整備・改善」なのです。多くの経営者や設計家は、お客さまの目に触れる場所にだけ投資をしようとします。しかしその効果は2~ 3年しか続きません。一方、スタッフが働くバックヤードの労働環境やスタッフ動線が十分に整備・改善されなければ、作業ロスが重なってサービス品質の劣化を招き利用客の減少につながります。また休憩室・リネン室・厨房・喫煙ルームなどの整備が悪ければ、スタッフのモチベーションES(従業員満足)が低下し、離職率の上昇にもつながります。
  特に働き方改革によって雇用形態と被雇用者の意識も大きく変わっていくなか、「職場環境の整備・改善」は不可欠だといえます。
 
―― 一方、「人材育成」に関してもかなり注力していますね。
 
脇田 コロナ禍以前は月1回1泊2日で全支配人が出席する会議を実施していました。この2年はオンライン形式で継続しています。また、毎朝8時30分から事業部ごとにオンラインで朝礼を開催しています。支配人会議・朝礼では、支配人一人一人に集客施策や売上げ目標などを発表させる場を設けています。他の支配人の前で目標を発表した以上、達成に向けて努力せざるを得ません。そうやって「連帯感」と「良きライバル意識」をもてる企業風土を醸成することで個々の支配人とスタッフのスキルアップにつなげています。
  支配人は現場のトップですから、どうしても“お山の大将”になりがちです。同じ立場同士を競わせることでより高い目的意識をもたせ、また各店の成功体験も共有していきます。
  もちろん、会議で発表した売上げ目標を達成するのは、支配人一人ではできません。現場のスタッフとその目標を共有し、「達成するためにはどうしたらいいか」をみんなで考え、実行することで現場に連帯感が生まれます。支配人はスタッフを指導し、ときには叱りながら現場をまとめていく過程で、支配人としての責任感もマネジメントスキルも醸成されます。最終的には、支配人とそこで働くスタッフが、それぞれに自律性と責任感をもって日々の業務を遂行できる組織が理想といえるでしょう。
  HOTEL MYTH GROUPのホテルのバックヤードには、さまざまな標語や格言が掲示してあります。
●「人に自由あり、自由に責任あり。人に権利あり、権利に義務あり」
●「お客さまへの感謝の気持ちが、言葉遣いと態度を変える」
など、著名人の本などからの引用ですが、こうした言葉を目にすることで、意識への刷り込みが行なわれ、スタッフ一人一人がより能動的に、自律的に業務に取り組んでもらえるようにしています。
 
――経営環境が厳しさを増していくなか、事業を成長させるためにどのような姿勢で臨めばいいのでしょうか。
 
脇田 レジャーホテル事業は細かなノウハウを積み重ねることで成立します。日々の業務のなかにあるノウハウの種を丹念に拾っていくことが重要で、一朝一夕でできることではありません。それを可能にするには経営者もスタッフもこの事業を好きになることが大切です。
  一方で、SDGsが求められる時代となりました。世の中にあるすべての事業活動には社会性が伴います。つまり社会のなかでどのような位置付けで、どのような価値を提供できるかが評価されるのです。レジャーホテルも、地域社会に溶け込み、地域貢献ができているかが重要になります。売上げをあげればいいという考え方は過去のものです。ただでさえレジャーホテル事業は偏見の目で見られがちですから、それを払拭するためにも、自らの企業価値を、事業価値を、高めていく努力をしなければならないと思います。
 
――本日はありがとうございました。