一般社団法人 日本レジャーホテル協会

[協会]

コロナ禍を経て事業者に求められる「変容」
「温故“創”新」で新たな価値創造を協会がサポート

(一社)日本レジャーホテル協会
会長 清水 祐侍
 

今年に入ってからオミクロン株が急激な感染拡大をみせるなど、新型コロナに関して余談を許さない状況が続くなか、新たな年度が始まった。(一社)日本レジャーホテル協会では、先ごろ策定した「Vision3000組織変革構想書」を本格的に推し進めつつ、会員事業者のコロナ対応を的確にサポートしていく構えだ。Withコロナ、Afterコロナにおけるレジャーホテル事業のあり方と、その先の将来に向けた指針について、清水祐侍会長に話を伺った。
 

企業名

(一社)日本レジャーホテル協会

TEL

03-6261-2183

所在地

東京都千代田区四番町11-3

URL

https://jalh.or.jp/


会長 清水 祐侍

コロナ禍でのさまざまな事業努力が
ピンチをチャンスに変える力となる
 
――昨年度(21年度)のレジャーホテル業界を振り返ってください。
 
清水 21年度の上期は、前年から続く新型コロナ禍の影響で繁華街のレジャーホテルが大きな打撃を受ける一方、郊外型レジャーホテルは最小限の影響にとどまりました。飲食店やカラオケなどのレジャー施設が営業制限を余儀なくされるなか、行き場をなくしたカップルの受け皿としてレジャーホテルの価値が見直されたのが、21年度上期までの流れでした。
 21年度下期になると、9月30日に全国の緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が一斉に解除され、経済が回復に向けて動き出しました。気になるのは、それまで比較的堅調だった郊外型レジャーホテルの一部が売上げを落としていることです。繁華街に人流が戻りはじめたことが要因なのかもしれません。実際、繁華街のレジャーホテルのなかにはわずかながら回復基調をみせる店舗もあったようです。
 その後、年が明けた1月にはオミクロン株の急激な感染拡大で一部の自治体がまん延防止等重点措置を再開させるなど、コロナをめぐる情勢は日々変化し、余談を許さない状況が続いています。
 
――この先しばらくはWithコロナに対応した経営が求められます。レジャーホテル事業者はどう対処すべきでしょうか。
 
清水 飲食店を例に考えてみましょう。コロナ禍では飲食店に対してさまざまなかたちで助成金が支給されており、一部の個人商店では、助成金で生活が成り立つので店舗営業を休止するケースもありました。私の知り合いの飲食店経営者も、助成金の一部で店舗を改装したほかは「店を閉めて、趣味の釣りをしていた」と言っていました。しかし宣言解除後に店舗営業を再開してから、客足を取り戻すことができずに苦労するケースが少なくありません。一時的な営業休止であっても、一度離れてしまった客足はそう簡単に戻るものではありません。
 それとは逆に、助成金を受給してもなお経営が厳しいなか、新たなメニュー開発を行ない、テイクアウトをはじめるなど、さまざまな施策を講じ、事業努力を重ねてきた飲食店もあります。コロナ禍で生き残るためのそうした施策は新規顧客層の開拓にもつながり、宣言解除後に多くの集客を確保したケースもあります。
 つまり私が言いたいのは「苦境のなかで何をしたか、どう変わったか」が重要だということです。レジャーホテル業界においても、旧態依然とした経営ままコロナ禍を漫然とやり過ごすのではなく、サービス向上のために客室設備を刷新したり、人材教育を充実させるなどの施策を行なっている事業者は少なくありません。苦境のなかでのそうした事業努力は、ピンチをチャンスに変える大きな力となるはずです。
 コロナ禍では消費者の価値観や生活様式が大きく変わり、簡単には元に戻らないでしょう。レジャーホテル事業者も、それにあわせて変わらなければいけません。それは「変化」ではなく「変容」、つまり表面的ではなく本質から変わっていくべきだと私は考えます。
 実際、レジャーホテルの競合はコロナ禍で大きく「変容」しています。大手資本のシティホテルやビジネスホテルがデイユースをスタートさせ、レジャーホテルの休憩利用がそこに流出しています。私たちは「それでもやっぱりレジャーホテルのほうがいい」とお客さまに思わせるだけの新しい価値を創造しなければいけません。もはや「変容」しなければ、生き残っていけないのです。
 
 

「Vision3000」の本質は
会員数3,000店に対応できる組織づくり
 
――とはいえ、事業者が「変容」するのはなかなか容易ではないのでは。
 
清水 確かにそうですね。まずは事業者が「変容」に耐えうるだけの知識を持ち、マーケット分析と自己分析をしっかり行ない、お客さまが何を求めているのかを把握したうえで、それを現場=店舗に落とし込まなければいけません。実際にお客さまにサービスを提供するのは店舗の従業員なのですから、彼らの雇用体勢を含めた環境整備も重要となります。
 しかし、そうした環境整備にはコストがかかるのも事実。資金力に乏しい小規模事業者には、なかなか難しいかもしれません。そうした事業者をサポートするのが、私たち協会の役割となります。
 先ごろ協会が策定した「Vision3000組織変革構想書」は、表面的には「会員数3,000店の達成」が目標となっていますが、真の目的は「3,000店になったときにしっかりと機能する組織づくり」にあります。会員数3,000店は、そう遠くない時期に必ず達成するでしょう。問題は、そのときに協会組織がどうあるべきか、会員をどのようにサポートできるかです。
 本来ならすでにそのための体制づくりが進んでいるはずでしたが、コロナ禍の影響で遅れていました。2022年度は、Vision3000に向けた体制づくりを本格的に推し進めるさせる年となります。
 
――体制づくりを推し進めるうえで留意していることは。
 
清水 「温故知新」という言葉がありますが、それをさらに掘り下げた「温故“創”新」が、体制づくりには必要だと考えています。レジャーホテル業界には、草創期から脈々と受け継がれてきた独自のビジネスモデルがあります。コロナ禍で集客を確保できたのも、他の宿泊業態にはない昔ながらのビジネスモデルが、密を避けたい利用者ニーズにピタリとはまったからに他なりません。
 そうした従来のビジネスモデルの利点を残しつつ、ニーズの変化にあわせて「変容」させて、新しいビジネスモデルを作り出す必要性があるのです。
 もっともこれはコロナ禍以前から定められた道筋でもあります。宿泊者名簿の件や慢性的な人材不足など、レジャーホテル業界が長らく抱えてきた数々の課題を解決するために「変容」は不可避であり、たまたまコロナ禍というタイミングが重なったのだと考えています。
 
――宿泊者名簿の問題ひとつとっても、いろいろな意見があります。
 
清水 協会としては当然ながら「法令遵守」の立場ですが、かといって闇雲に強制するだけでは、事業者はもちろんお客さまにも理解されないでしょう。レジャーホテル独自のビジネスモデルと法令遵守をどう結びつけていくか。その答えを出すのにはもう少し時間が必要となりますが、いずれにせよ会員が納得できる出口戦略をきちんと設定したうえで、導いていくことが協会の使命だと考えています。
 
――人材確保についてはいかがですか。
 
清水 CS(顧客満足)向上のためには、ES(従業員満足)が必要不可欠だという意識を、すべての事業者が共有しなければレジャーホテル業界の未来はありません。
 では、ES向上のために具体的にどうすればいいのか。よくいわれるのが「正しい評価基準による」「高給与・高待遇」です。これに関しては、評価基準書などの各種フォーマットを協会から提供するなどして事業者をサポートしていければと考えています。
 その一方で、このコロナ禍で私自身、経営者としていくつかの気づきがありました。たとえば私が経営するホテルでは、コロナ禍で集客が落ちていた時期に、2〜3の客室をクローズして従業員の休憩室としました。密を避けるために休憩は1人ずつ交代でとらせていたのですが、従業員の間でこのスタイルは非常に評判がよくて驚きました。「休憩中は1人になりたい」という従業員の隠れたニーズを汲んだかたちとなり、定着率向上にも少なからず影響しているようなのです。
 ES向上のためには、高給与・高待遇も必要ですが、目の前にある細かな労働環境改善を重ねることも重要なのだと再認識しました。こうしたアイデアも、協会内で水平展開できるのが理想です。
 私たち日本レジャーホテル協会が目指すのは、すべてのレジャーホテル事業者を横でつなげることです。会員数3,000店を達成すれば、その先には4,000店、5,000店も可能となります。そうやって組織を拡大しつつ、トップダウンだけではなくて相互に支え合える。そんな強固な組織づくりを、「Vision3000」を通して進めていきたいと考えています。
 
――本日はありがとうございました。


衆議院議員  平沢勝栄氏
 コロナ禍で苦しむ中小企業のために国が設けた各種助成制度のうち、持続化給付金の対象からレジャーホテル事業者が外されているのは、まさに痛恨の極みです。政治の意思決定プロセスにおいてたった一人の議員が反対した結果ですが、そもそもこうした職業差別は絶対にあってはならない。全国14万人のレジャーホテルの雇用を守るために、私は今後も最大限の支援を続けてまいります。同時に、事業者の皆さまも業界の健全化に向けて一層の努力を続けていただければと思います。
 

 

参議院議員  増子輝彦氏
 11年前の東日本大震災、そして今回のコロナ禍と、私たちはまさに激動の時代を生きています。しかし、私たちがこれらの困難を乗り越えた先には、Withコロナ、Afterコロナの新しい未来が待っています。その新しい未来=ニューノーマルに対応するためには、新しいビジネスモデルが求められます。さらなる公衆衛生の徹底や、業界の健全化、人材育成なども必要となるでしょう。協会の皆さまが力をあわせて新しい未来をつくりあげるために、私も微力ながらお手伝いさせていただきます。
 

 

衆議院議員  小倉將信氏
 私は「時代に適した風営法を求める議員連盟」の事務局長に就任し、風営法に関する規制が本当に時代に適しているのかという課題解決に取り組んでいます。レジャーホテル業界においても、たとえばコロナ禍ではフロントでの対面受付は不要であり、リモートシステムを活用してセキュリティや安全を担保しながらお客さまをお迎えするスタイルが、令和の新常識になっています。価値観や生活様式の変化に対応し、レジャーホテルの事業環境を改善していくためにさまざまな課題に今後も取り組んでまいります。

日本レジャーホテル協会委員会活動
「Vision3000」達成に向けた活動方針とビジョン

 (一社)日本レジャーホテル協会が会員数3,000店舗を達成するために策定した「Vision3000 組織変革構想書」に基づく新たな体制づくりが進んでいる。レジャーホテル業界を取り巻く事業環境が年々悪化するなか、業界団体としての発言力を高め、協会が手がける事業の実行性の向上と全国のレジャーホテル事業環境の改善につなげることを目的とした「Vision3000」は、「内部統制強化」「事業実効性強化」の両面から組織変革を行なっている。このうち「内部統制強化」については、6ブロック制への移行が変革の大きなポイントとなっており、本部と地方会員の情報共有や意見集約、サービス提供強化が図られる。
 一方、「事業実効性強化」のためのポイントとなるのが、新たに発足する「総務委員会」「会員交流委員会」「会員サービス委員会」の3委員会である。協会の正会員は、これらいずれかの委員会に必ず所属し、協会活動に対してより主体的に関わっていくこととなる(図表)。

 「総務委員会」は渉外や広報、法令遵守、調査研究、財務強化などを行なう委員会で、山本正博氏が委員長を務める。「会員交流委員会」は、正会員や賛助会員同士の交流を深めるためのイベントやセミナーなどを企画・運営する委員会で、髙崎次郎氏が委員長を務める。「会員サービス委員会」は協会員向けのサービス向上を図るための委員会で、久保田正義氏が委員長を務める。
 3委員会の発足にあたり、各委員会委員長に、委員会の活動目的や具体的な活動内容などについて話を伺った。


 
【総務委員会】 事業環境の整備・改善を目的に、規制緩和・法令遵守


日本レジャーホテル協会副会長
総務委員会委員長
山本正博

 総務委員会は、協会員であるレジャーホテル事業者にとって経営しやすい事業環境を整備・改善することを目的としています。具体的には行政に対する規制緩和の働きかけや、会員に向けた法令遵守、安全衛生の啓蒙などを行なっていきます。
 コロナ禍にあってレジャーホテル事業者が持続化給付金の支給対象外になるなど、業界への差別的な扱いは根強く残っています。私たちは規制緩和とともにこうした業界差別の撤廃に向けた活動も、根気強く行なっていきます。
 一方で、私たちレジャーホテル事業者自身も、業界の健全化に向けて努力していく必要があります。レジャーホテルは、主に旅館業法と風営法という二つの法規制のもとで営業を行なっていかなければなりません。何が“適法”で何が“違法”であるのか、私も含めて多くのホテル経営者がこの法律を理解できているのでしょうか。違法状態があるのなら法を正しく理解したうえで、事業者の皆さんが不利益を被らないような解決策を探っていく必要があります。ほおっておいて今後も差別的な扱いがなくなることはなく、さらなる規制の強化で事業が立ち行かなくなる恐れがあるからです。こうした課題解決に向け、総務委員会では必要な調査研究なども行なっていきます。


 
【会員交流委員会】 事協会員、賛助会員が“腹を割って”交流できる場を提供


日本レジャーホテル協会副会長
会員交流委員会委員長
髙崎次郎

 
会員交流委員会は、正会員や賛助会員同士の交流を促進させることを目的としています。
 従来、協会員が一堂に会する機会は、毎年2月に開催される賀詞交換会や6月の総会などに限られていました。また、協会員に向けた新サービスの告知なども紙面で一方的に伝達するケースが多く、協会員の皆さまの本音の意見を聞く機会はあまり多くありませんでした。
 そもそもレジャーホテル事業者は地域社会から孤立しがちで、近隣の競合店舗とも情報交換しづらいのでますます孤立してしまいます。同業者との情報交換や“腹を割って”話せる仲間との交流を、多くの事業者が欲しています。
 会員交流委員会では、協会員や賛助会員同士の“フェイス・トゥ・フェイス”の交流、リアルな集いの場を増やしていく予定です。
 具体的には、協会員同士の交流に主眼を置いた「全国交流会」を今秋くらいを目処に計画しています。ゴルフコンペなどのレクリエーションを通して、普段なかなか顔を合わせる機会のない事業者同士が“腹を割って”話し合える場としたいと考えています。また、法令や安全衛生などに関するセミナーなども随時開催します。
 そして、こうした魅力的な交流の場に参加できるメリットを打ち出すことで、Vision3000に向けた会員数の増大につなげていきます。


 
【会員サービス委員会】 事業規模を問わず、すべての協会員が享受できるサービスを


日本レジャーホテル協会常務理事
会員サービス委員会委員長
久保田正義

 会員サービス委員会は、協会員に向けたサービスの充実を図ることを目的としています。協会員のなかには大規模店舗を運営したり複数店舗を展開する事業者がいる一方、小規模の店舗で頑張っている事業者もいます。事業規模の大小にかかわらず、すべての協会員が等しくメリットを享受できるようなさまざまなサービスを提供していきます。
 従来のサービスのなかでもっとも高い評価をいただいているのはNHK放送受信料の割引サービスですが、今後は各種ホテル設備の契約や客室アメニティの仕入れなどについても、割引が得られるような仕組みづくりを進めていきます。全国で2,000店舗以上が加盟しているスケールメリットを活かしながら、協会員のレジャーホテル経営をサポートできる新サービスを企画していきます。
 また、こうした会員サービスの充実こそが、新規会員獲得、会員数増大に直結するので、未加入の事業者に向けた宣伝活動にも力を入れていきたいと考えています。専用のパンフレットなどを制作し、設備機器やグッズなどを扱う関連業者さまのご協力をいただきながら、協会が提供する各種サービスと、そのメリットを広く宣伝していくことで、3,000店舗達成を成し遂げることができると考えます。