あすか信用組合

[金融]

レジャーホテル企業に対する融資動向と
経営サポートの実際

融資営業部 部長 高 成眞

 

新型コロナウイルスの最初の感染拡大から丸2年が経過し、先行き不透明な状況が続くなかでも、多くのレジャーホテル事業者が前を向き、売上げ回復に向けた努力を続けている。長年にわたってレジャーホテル業界への融資を行なってきたあすか信用組合もまた、そうしたレジャーホテル事業者をサポートすべくさまざまな取組みを講じている。この2年間と、将来的なレジャーホテル事業者への経営サポート体制について話を伺った。
 

企業名

あすか信用組合

TEL

03-3208-5101

所在地

東京都新宿区歌舞伎町2-32-9

URL

https://www.asuka-c.jp


コロナの影響は事業者ごとに千差万別
元金返済猶予の措置なども柔軟に対応
 
──新型コロナウイルス禍におけるレジャーホテル業界に対する融資の取組みを改めて振り返ってください。
 
高木 最初に新型コロナが感染拡大した2020年3月、当組合では未曾有の緊急事態への対応として、元金返済猶予の措置に踏み切りました。その時点では1年間の限定措置としていました。
  同年4月から5月にかけての第1次緊急事態宣言下では多くのレジャーホテルが売上げを落としたものの、宣言が解除された6月以降は徐々に売上げが回復し、シティホテルやビジネスホテル、旅館といった他の宿泊業態と比較して、コロナ禍の影響は最小限にとどまりました。
  いま振り返ってみても、元金返済猶予の措置は正しい判断だったと思います。レジャーホテル事業者さまにとっては、売上げがゼロにならない限りは手元にキャッシュが残ります。コロナ禍で新たに借入れをして返済額が増えるケースはほとんどみられませんでした。
高木  2021年になると、さらなる売上げ回復がみられました。業界全体としてはコロナ以前の2019年と比べて7〜8 割程度戻ってきたようです。月単位でみれば19年比でプラスになったケースもあったようですが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が頻発され、売上げに波がありました。また、年間の売上げがプラスになった事業者さまがある一方で、売上げが半減して元に戻らない事業者さまもいました。その明暗を分けた要因は何だったのか。今後、詳しく分析する必要があります。
 
──2021年度も元金返済猶予は継続されていましたね。
 
高木 21年度からは半年ごとに見直しを図っています。
  このころになると、「すでに売上げが回復しているから返済を再開したい」という事業者さまや、「回復はしたものの、先行き不透明で不安なのでもう少し猶予が欲しい」という事業者さまなど、さまざまなご要望が出てきました。当組合としても、そうした個別の要望に対して柔軟な対応を取るようにしました。たとえば、本来なら月100万円を返済していただく約定でも月30万円に減額したり、返済再開の半年後に再び売上げが減少したことから改めて元金返済を猶予するなど、事業者さまの個別の事情に応じた返済計画のご提案を続けています。
  22年4月以降、新年度も収束の兆しが見えない状況が続くものと思われますので、元金返済猶予のご提案を含めた柔軟な対応を心掛けてまいります。
 


融資営業部 次長
高木 栄基

融資営業部 係長
成山 泰輔 氏

リニューアル投資は必要不可欠
元金返済猶予の事業者にも融資
 
──コロナ禍の2年間、レジャーホテル業界の動向をどのように捉えていましたか。
 
高木 新規ホテル取得の案件は、コロナ前と比べてとても少なくなりました。コロナ禍という異常事態のなかで、一時的とはいえ売上げが減少しているホテルを正しく評価するのは非常に難しいことです。いつコロナが収束するのか、収束後に売上げが100%回復する保証があるのかなど、不透明なことが多すぎます。
  また、借換え融資のご相談もほとんどありませんでした。
成山  一方、ホテルのリニューアルに関してはコロナ禍のなかでも20年から21年にかけて積極的に行なわれており、当組合でもしっかりとサポートさせていただきました。とくに、コロナ禍が予想外に長引きそうだという認識が広がった21年には、収束して客足が戻る前に思い切ってリニューアルしようと考える事業者さまが多かったように感じています。
  リニューアル投資は、ホテルを長期間維持していくうえで必要不可欠なものなので、当組合としても可能な限り融資のご要望に応えてきました。元金返済を猶予している事業者さまに対しても、トラックレコードなどを吟味したうえでリニューアル資金を融資させていただいております。
 
──ちなみに、コロナ禍での他業種・業界への融資状況は。
 
高木 コロナ禍でも活発だったのは不動産業界への融資でした。不動産は投資対象としてわかりやすく、住居系の投資物件は売買が活発であったため、コロナの影響をさほど感じさせないものでした。
  また、業種を問わず、コロナ禍で融資のご相談が増えました。組合として、JR山手線のサイネージ広告でPRするなどの宣伝活動にも注力してきたことが功を奏したのかもしれません。
  そのようななかで、日常使いのレジャーホテルという業態は強いなと再認識しました。それは11年前の東日本大震災、27年前の阪神淡路大震災の際にもいわれていたことです。未曾有の事態を乗り越えた経験が、昨今のコロナ禍でも活きているのではないでしょうか。

優秀な人材確保・育成がカギ
生き残るレジャーホテルの条件

──レジャーホテル経営者が抱える悩みでもっとも多いのが事業継承に関することです。そうした悩みや課題に対し、組合としてサポートする機会はありますか。
 
成山 たしかに、オーナーさまが高齢になって事業の継承先が見つからずに困っているという話はよく聞きます。そうしたオーナーさまに対しては、M&A という形で当組合が売却先をご紹介したケースもあります。今後、こうしたケースは増えてくるでしょうから、当組合としても引続きサポートしたいと考えています。
 
──2年にわたるコロナ禍でリモートワークをはじめ仕事・遊び・生活のライフスタイルが大きく変化しており、レジャーホテルの事業環境も様変わりしています。今後、どのようなレジャーホテル事業者が生き残っていくと思われますか。
 
高木 レジャーホテルを含めたサービス業にとって今後必要となるのは“人材”だと考えます。設備などのハード面はお金をかければ一定のクオリティを保つことができますが、もはやそれだけでは宿泊事業者をはじめ競合他社との差別化を図るのは難しいでしょう。固定客、リピーターの確保に必要なのはサービスの充実にあります。サービスの提供を担う優秀な人材の確保・育成に注力することで、はじめて中長期にわたる明確な差別化が図れるのではないでしょうか。
成山  また、不況下でも売上げを確保し、成功しているレジャーホテルに共通しているのは、オーナーさまが熱心に自社ホテルに足を運んでいるという点です。週1回でも、月1回でも、オーナーさまがホテルに顔を出すことで現場の緊張感が保たれますし、店長やスタッフが気付きにくい改善点をお客さま目線で洗い出すこともできます。
 
──最後に、今後の抱負をお聞かせください。
 
高木 当組合としてはいかなるお客さまのご要望に対しても、まずはお話しをお聞きしたうえで、可能な限り最善の対応をとらせていただきます。事業者さまが抱えるお悩みや課題は千差万別ですから、それぞれの事情を鑑みてフレキシブルに対応いたします。また、物件取得に関するご融資においては、近隣ホテルの状況などから精査して、無理のない適正な融資を心掛けてまいります。
成山  昨年末には都内の新規感染者が2ケタ台にまで減少したにもかかわらず、わずか1か月後には1万人を超えるなど、新型コロナの感染状況は振り幅が大きく、消費者のマインドも大きな影響を受けています。今後も先行きが見通せない日々が続くなか、レジャーホテル事業者さまを少しでもサポートできるよう対応してまいります。

──本日はありがとうございました。